事実は小説より。異世界ライフがリアル

第10話 衝撃の洗濯事情

　 一夜明けて土曜日。今日は大（おお）城（しろ）ご夫（ふ）妻（さい）は、マーチャさんのご実家の手（て）伝（つだ）いへ行かれる日だ。

　ついて来るか、それとも近くを一人で回ってみるかと訊（たず）ねられ、近所をうろついてみる事にした。

　三時の鐘（かね）がなったら、夜の忙（いそが）しい時間は手（て）伝（つだ）いに行く。

　さすがに、丸一日ふらふらするのは気がひける。

　かといって、ちょっと見てまわる楽しみもほしいので、時間を区（く）切（ぎ）って両方する。

「じゃあこれね。欲（ほ）しいものがあったら買っていいから」

「買う……。あ、布（ふ）団（とん）とか、暖（だん）房（ぼう）器（き）具（ぐ）の予（よ）備（び）ってありますか？」

「布（ふ）団（とん）？温（あたた）かくなる加（か）工（こう）の布（ふ）団（とん）を使ってるはずなんだけど、寒（さむ）い？寒（かん）の戻（もど）りでしばらく冷え込（こ）んでいるから、足りないのかしら？

　使っていない布（ふ）団（とん）も暖（だん）房（ぼう）器（き）具（ぐ）もあるから、出すわね」

「気が付かなくてすまなかった。風（か）邪（ぜ）ひかせるところだったな。本当にすまんっ」

「大（だい）丈（じょう）夫（ぶ）ですよ。

　ありがとうございます。後でお願いします」

　 ……。さっき渡（わた）された袋（ふくろ）を開けると、いわゆる金（きん）貨（か）って貨（か）幣（へい）に銀（ぎん）貨（か）、銅（どう）貨（か）がじゃらじゃら入ってるんだけど……。流（さす）石（が）にもらい過ぎでは……。

　いくらか返そうにも、マーチャさんの顔にも大（おお）城（しろ）さんの顔にも、返すつもりじゃないよなって書いてある気がする。

　布（ふ）団（とん）や暖（だん）房（ぼう）器（き）具（ぐ）を出してもらえるなら、他にいる物？他にほしい物が思いつかないし、こんなにもらわなくてもいいんだけど、困（こま）ったな……。

「持っていなさい」

「ああ、手作りの物しかないからな。これがこんなに高いのかってぇのは、しょっちゅうあるぞ」

　確（たし）かに、一つ一つが高そうだ。高そうでももらい過ぎ感は拭（ぬぐ）えないが、ありがたくお小（こ）遣（づか）いを頂（いただ）く。

「たくさん頂（いただ）いて、ありがとうございます」

「残（のこ）った金はそのまま持っとけ。当分の小（こ）遣（づか）いだからな」

「金（きん）貨（か）一枚になったら言って。足すから」

　 足すの？！あんまり使わないようにしよう。

　食事を終えると、マーチャさんは早（さっ）速（そく）布（ふ）団（とん）と暖（だん）房（ぼう）器（き）具（ぐ）を出してくれた。

　横向きに止まってるつまみを上に捻（ひね）ると温（おん）風が、下に捻（ひね）ると冷風が出る、薄（うす）い縦（たて）型（がた）の、温（おん）冷（れい）どちらの風も出るヒーターみたいな物に感（かん）動（どう）した。

　そして、出かけるまでに一週間分の洗（せん）濯（たく）をする。

　洗（せん）濯（たく）している姿（すがた）を見ない理（り）由（ゆう）が分かった。衝（しょう）撃（げき）の事実も。

　下（した）着（ぎ）と肌（はだ）着（ぎ）は毎日替（か）えるが、服は冬はシーズンの終わりにまとめて洗うもので、毎日洗う習（しゅう）慣（かん）はないそうだ。

「我（わ）が家はオオシロが毎日洗おうって言うんだけど、オオシロの言う脱（だっ）水（すい）がちゃんと出来ないから乾（かわ）かないのよ。

　乾（かわ）くくらい絞（しぼ）ると、服がボロボロになるから、毎日服を洗うのは難（むずか）しいわね」

「ちなみに、洗（せん）濯（たく）機（き）はありますか？」

「センタクキ？なあに、それ？」

　絶（ぜっ）句（く）。洗（せん）濯（たく）機（き）がないのか。

　ヒーターのような進んだものもあれば、まだまだの物もあるんだな。

　しかもかなり差が激（はげ）しいな。

「ね？センタクキって何？」

「地球には、洗（せん）濯（たく）物（もの）を勝（かっ）手（て）に洗（せん）濯（たく）をしてくれる洗（せん）濯（たく）機（き）っていう魔（ま）道（どう）具（ぐ）があるんですよ。

　洗って濯（ゆす）いで、なかには服の乾（かん）燥（そう）までする機（き）能（のう）のある洗（せん）濯（たく）機（き）もあります」

「まああ！地球には、本当に驚（おどろ）かされる物が色々あるのね！

　こっちにも出来たら、どれだけ助かるかしら」

「そうですね。この世界で作れる洗（せん）濯（たく）機（き）、ほしいですね」

　商（しょう）業（ぎょう）者（しゃ）ギルドの近くで、魔（ま）道（どう）具（ぐ）ギルドの看（かん）板（ばん）を見た覚えがある。どんな物があるか、覗（のぞ）いてみよう。

　それっぽい物や情（じょう）報（ほう）だけでもあるなら、多分、商（しょう）業（ぎょう）者（しゃ）ギルドじゃなくてそっちだよね？

　電気やガスを使っていたような物は魔（ま）道（どう）具（ぐ）だって話だったから、合っているはず。

　大（おお）城（しろ）さんにどっちへ行くのがいいか、聞いてからがいいかな？

　魔（ま）石（せき）を使うなら魔（ま）道（どう）具（ぐ）ギルドへと教えてもらい、私は先ず、魔（ま）道（どう）具（ぐ）ギルドへ。

　大（おお）城（しろ）さん達は、マーチャさんの実家へ向（む）かって家を出る。

　迷（まい）子（ご）になると困（こま）るんで念（ねん）のため、この家の住所とマーチャさんのご実家の住所と宿（やど）の名前をメモった紙も持ったので、あっちこっち行ってみよう。

　マーチャさんの分の家の鍵（かぎ）をお借（か）りしたので、洗（せん）濯（たく）物を取り込（こ）んで宿（やど）へ向（む）かう約束をして。

　じゃあ、また後で！と、玄（げん）関（かん）前（まえ）で別れ、さあ町へ！