第十三話 第7階層

 第6階層でのイレギュラーがあったが俺たちは何とか第7階層まで進むことができた。


 本当は宿に戻って一晩休んでから来たかったがハンナからの圧が凄かったためそのまま第7階層まで進むことにしたのだ。


 第7階層には黄金の果実を落とすエルダートレントが出現する。


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 ステータス

 種族:エルダートレント

 ランク:3

(能力値)

 筋力:5420

 体力:4562

 頑強:5600

 敏捷:100

 魔法:1200

(スキル)

 アクティブ:(Runk3)再生、(Runk1)硬化

 パッシブ:‐

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 トレントと同じで敏捷の能力値は低いがそれ以外のステータスが高く、再生と言うスキルを使って永遠に回復し続けるため半端な攻撃では永遠に倒す事ができない。


 第7階層には無数のエルダートレントが生い茂っているため常にエルダートレントに囲まれた状態で攻撃を続ける必要があり休む暇がない。


 俺は木こりのようにエルダートレントを狩り続け黄金の果実を収穫する。


 収穫した黄金の果実の一部はハンナの胃袋の中に納まり、残りはハンナのアイテム袋に収納していく。


 ハンナのアイテム袋がいっぱいになったところで、ノービスの街へ戻る事にした。



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「マジか」


 冒険者ギルドの裏口にある買取所では人だかりができていた。


 その先頭にいるバラスさんがオーガの固有種ユニークの死体を見て驚きの表情を浮かべている。


「その若さで下位とはいえランク5をソロで討伐するとはな」


「ランク5ですか? オーガの固有種ユニークはランク4だと冒険者ギルドの講習で習ったのですが」


固有種ユニークのような特殊個体は強さのばらつきが大きい。こいつは3年前に出てきた固有種ユニークよりも上だな」


「どうしてそう思われるのですか?」


「俺は『死体鑑定』のスキルがあるからな、モンスターの死体からそのランクや能力が分かるのさ」


「なるほど。 そういうスキルがあるのですね」


「これからどうするんだ?」


 一瞬バラスさんの質問の意図が分からなかったが、少ししてその意図を理解した。


「もう少し力を付けたら、この近くにある大都市『セフィア』に行こうかと思っています」


「そうか。 確かに『セフィア』にはここより規模の大きいダンジョンがある。 だが、今のお前の力なら『セントラル』でも十分通用するだろう」


 バラスさんがノービスのダンジョンより一つランクの上のダンジョンがある『セフィア』よりも更に上位のダンジョンがあるこの国の首都『セントラル』を勧めてくる。


「『セントラル』の近くには5つのダンジョンがある。 癖のあるダンジョンが多いが、ランク4のエルダートレントを乱獲し、ランク5の固有種ユニークを倒せるレベルの冒険者が拠点にするのならこの国では一番だろう」


「何言ってるのよ! ここを離れたら黄金の果実はどうなるのよ!」


「ふむ......鮮度維持のスキルが付与されたアイテム袋に入るだけ詰め込んでおけばいいんじゃないか。 袋に入れておけば100年経っても新鮮さが失われないという話だ」


「そんなのあるの?」


「セントラルにはそういったスキルのついたアイテムや装備を作れる職人も少なくない。 セントラルで買うよりはだいぶ割高になるがうちにある予備を売っても構わないぞ」


「ふーん」


「それにセントラルには菓子職人も多い。 ここら辺ではお目にかかれないような果物を使ったスイーツも多いと聞くがな」


「まじで? ジーク聞いた? セントラルに行くわよ!」


 ハンナはいつもながら単純だなと思う。


「行くなら来週の冒険者ランク更新のタイミングを待ってからが良いだろう。 『銅』ランクになればギルドの高速便が使えるようになる」


「高速便ですか?」


「来月の頭にセントラルへ行く高速便がこの街に来ることになっている。 それなりに値は張るがそれにのっていけば馬車で1週間以上かかる道のりが1日で済む」


「それでいいじゃない!」


「そうしようと思います。 いろいろと教えていただきありがとうございます」


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 あれから1週間、俺はハンナと一緒に第7階層に籠ってエルダートレントを狩り続けていた。


 バラスさんから売ってもらったアイテム袋には1年間はもつくらいの黄金の果実が詰まっている。


 能力値も大幅に上がりセントラルに行く準備は万端と言う感じだ。


 そして珍しく冒険者ギルドの裏口ではなく表口にある受付にきている。


「おめでとうございます。 ジークさんの冒険者ランクがDに上がりました」


 受付のお姉さんが銅でできた冒険者プレートを渡してきた。


 ノービスの冒険者ギルドでは最高でもDランク(銅)までしかランクが上がる事は無い。


 CランクやBランクになるためにはより難易度の高いダンジョンがある都市に移動する必要がある。


「1件ジークさんあてに指名依頼が来ていますのでご確認をお願いします」


 受付のお姉さんから手渡された紙に目を通していく。


 依頼者:ガンテツ

 依頼内容:素材の採集

 期限:無期限

 備考:詳細については直接説明


「詳細は直接説明するとの事ですので、依頼を受けるかについても含めてご本人に確認していただければと思います」


「はい。 あとはセントラル行きの高速便を使いたいのですが、バラスさんからここで予約が可能だと聞いたのですが」


「高速便ですね。 次の便は3日後になります」


「はい。 予約をお願いします」


「3日後の正午にノービスを出発しますので、それまでに西の門の手前にある高速便受付にいない場合は乗る事はできません。 キャンセルでの返金はありませんのでお気を付けください」


「はい。 ありがとうございます」


 ・


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 冒険者ギルドを後にし、ガンテツさんの工房に立ち寄る。


「おう、待ってたぞ」


 ガンテツさんは一振りの巨大な剣を取り出すとそれを俺の目の前に置く。


成長する武器グローアームズというのを知ってるか?」


「いいえ。 初めて聞く言葉です」


「一部の魔物の素材は死んでもなお成長を続けると言われている。 この剣は俺が冒険者として現役の頃に手に入れたアークデーモンの変異種のコアをもとに作った物で使い手と共に成長する性質を有している」


「成長と言うのはどのくらい変わるものですか」


「所有者のスキルや能力値の成長に応じて強くなる。 所有者の成長に合わせて武器の強度や切れ味が増すという程度だがな」


「以前見せていただいた剣を超える事も可能なのですか」


「このままでは無理だろうな。 だがコア以外の素材を変える事でより大きな成長が期待できる。 例えば依頼に書いた竜の素材があればな」


「竜の素材ですか......」


「すぐには無理だろうが、お前ならいずれは可能だと思っている。 俺がまだ現役でいられる間にな。 だから依頼を受けてくれるならこれはお前さんに託そうと思っている。 そして成功報酬は、お前さんが収集してきた最高の素材をもとに俺ができうる最高の武器だ。 どうだ悪くないだろう?」


「はい。 この依頼を受けさせていただきます」


「あんたもなかなか見る目があるじゃない」


 肩の上のハンナがなぜかドヤ顔でうなずいている。


「とって来る素材はどんなものが適していますか」


「そうだな、モンスターの素材の中には特別な力宿っているものがある。 『竜の角』や『悪魔の心臓』なんかが有名だがそれ以外にも固有種ユニーク変異種イレギュラーの素材は成長する武器グローアームズの素材として適していることが多い。 この剣の刀身にはお前さんが倒したオーガの固有種ユニークの角を使っている」


「あのオーガの角ですか」


成長する武器グローアームズのコアには素材の力を吸収する力がある。 今回使った角であれば1週間程度で終わるだろう。 素材の力を吸収しきった後により強力な素材で打ち直す事で武器は進化する。 進化と成長を続ける事でいつか最強に至る事ができるのが成長する武器グローアームズの最大の特徴だ。 そのために必要な素材を集めるのは大変だがな」


「ご期待にこたえられるよういに頑張ります」


「一つ言い忘れていた。 セントラルに行くんだろう? であればコローという男を訪ねると良い。 彼からは多くを学ぶ事ができるだろう」


「コローさんですか?」


「昔、俺やバラスと共に冒険者をしていた男だ」


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