第十二話 第6階層


 第6階層では新しくオーガが出現する。


 オーガはジャイアントオークよりも一回り大きいため素の力が強い。さらに、能力値はレッサーオーガの倍近くある。それだけでなく、スキルの『鬼神』に加えて『発勁』という打撃系の攻撃を相手の防御を貫通して通す事ができるスキルを持っている単体でも非常に強力なモンスターだ。


 しかも、大量のレッサーオーガを引き連れているため、第5層に比べて難易度は一気に跳ね上がる。


 オーガを倒す事ができれば冒険者としては一人前と言っても良いと冒険者ギルドの講習の講師の先生も言っていた。


 一般的にはダンジョンは5人前後のパーティーで潜る事が多いため、ちなみにこの場合の『倒す』と言うのはソロで倒すという事ではなく『パーティーで倒す』という意味だ。


 もっとも、ほとんどの冒険者は第6階層に到達する前にノービスのダンジョンの攻略を止め、他の大都市のダンジョンへと移っていくらしい。


 5階層で戦えるレベルになれば他のダンジョンに行った方が経験値的にも金銭的にも得るものが大きいからだ。


「ステータスオープン」


 ############

 ステータス


 名前:ジーク

 年齢:12歳

 レベル:1

 職業:簒奪者


(能力値)

 筋力:3384

 体力:3262

 頑強:3041

 敏捷:2637

 魔法:2021


(スキル)

 アクティブ:(Runk3)鬼神_Lv3、(Runk2)スラッシュ_Lv1、(Runk1)硬化_Lv4

 パッシブ:(Runk-)簒奪

(加護)

 木妖精の加護(微弱)

   回復力上昇(微弱)

   呪い耐性(微弱)

   毒耐性(微弱)

   木属性付与

(呪い)

 経験値取得率0%、転職不可

 ############


 ############

 ステータス

 種族:レッサーオーガ

 ランク:3

(能力値)

 筋力:850

 体力:750

 頑強:850

 敏捷:450

 魔法:150

(スキル)

 アクティブ:(Runk3)鬼神

 パッシブ:‐

 ############

 ステータス

 種族:オーガ

 ランク:3

(能力値)

 筋力:1450

 体力:1150

 頑強:1550

 敏捷:670

 魔法:180

(スキル)

 アクティブ:(Runk3)鬼神、(Runk2)発勁

 パッシブ:‐

 ############


 今の俺ならば安定して第6階層で狩りを行う事が可能だろう。


  オーガの魔石はランク3の魔物の中でも上位という事もありかなりの高値で取引されるが、レッサーオーガ以上に解体が大変な事とオーガの身体が大きいためアイテム袋の容量をかなり必要とするためあまり人気が無い。


 代わりにオーガの角は高額で買取が行われるし武器として使用している金棒もそこそこの額で買取が行われるので安定してオーガが狩れるようになったらようやくそれなりに大きな収入を得る事ができるようになる。


 もっとも、そのレベルの冒険者であれば他のダンジョンでも同じくらい稼ぐ事が可能なので第6階層以降は不人気になってしまうのも納得である。


 森の中を進んでいくと大量のレッサーオーガを引き連れたオーガが現れる。


 1匹のオーガが100近い数のレッサーオーガを引き連れている。


 能力値ではこちらが圧倒的に優位であるが体格の差からくる素の力の差が大きいため油断はできない。


 俺は一気に距離を詰めると剣を持つ手に力を込め先頭にいるオーガの首を狙う。


「スラッシュ!」


 圧倒的な「敏捷」の能力値から放たれるスラッシュの一閃にたいして、オーガは反応する事も出来ずにその首を飛ばされる。


 そして、トップを失ったレッサーオーガの群れを逃がさないように手早く処理していく。


 どうやら、第6階層でも問題はなさそうだ。


 大量のレッサーオーガを狩った事で能力値とスキルレベルが上昇するのを感じる。


 この調子でしばらく第6階層で強化を図ろうか......と考えていた矢先にそれは現れた。


 身長は2メートルくらいだろうか


 プロレスラーのような分厚い筋肉で覆われた肉体


 30㎝はあるかと思われる2本の角


 こちらを睨む真っ赤な瞳


 オーガとは比較にならないほどの威圧感


 固有種ユニークまたは変異種イレギュラーと呼ばれる存在である事を否が応でも理解させられる


 考えるよりも早く身体が動く。


 剣を持つ手に力を込めソレとの距離を一気に詰める。


 オーガが反応できないほどの速度で移動した俺についてこれないのかその場にたたずむソレの首に全力の一撃を放つ。


「スラッシュ!」


 圧倒的なステータスから放たれる俺の一閃がソレの首を刎ねるかに思えた瞬間に、気が付けば俺は10メートル以上離れた場所まで弾き飛ばされていた。


 俺の目でも微かにしか捉える事ができないほどの速さで俺の一撃を手に持った金棒で防ぎそのまま力任せに弾き飛ばしてきたのだ。


 力でも速さでも圧倒的に劣っているという非情な現実がそこにはあった。


 圧倒的な力と速度を持つ相手だが、鬼神のスキルを使えばあるいわこちらが上回れるかもしれないという程度の差であるのも事実だ。


 だが、その選択には2つの問題がある。


 一つは鬼神のスキルは使用後の反動があるため、使って倒しきれなければ逆にこちらの死を招くという事。


 もう一つは相手も恐らく鬼神のスキルを持っているであろうという事だ。


 仮に鬼神のスキルで相手の力に近づけたとしても相手にも鬼神のスキルを使われれば再びその差は元に戻ってしまう。


 絶対的なピンチの中で俺にある名案が舞い降りた。


「逃げるぞ」


 俺はそういうと一目散にその場から撤収する。


 森の中を全力でかけていく。


 ソレは俺を追うようについてくるが構わずに全力で逃げ続ける。


 こちらの体力が尽きるのを待っているのだろうか、ソレは追いつくでもなく引き離されるでもなく一定の距離を維持してついてくる。


 しばらく逃げ続けていると目の前にオーガの群れが現れる。


 俺は群れの中にあえて飛び込み手当たり次第にレッサーオーガを狩りまくる。


 俺を追いかけてきたソレも同じようにオーガの群れに飛び込んでくるが、俺がレッサーオーガを盾にするようにしてソレの攻撃を凌ぐ。


 レッサーオーガの数が少なくなってきたところで群れから離れ逃げに徹する。


 そして再びオーガの群れを見つけそこに飛び込む。


 何度繰り返しただろうか。


 ソレが苛立ってきているのを感じる。


 だがまだ足りない。


 本気でこちらを捉えようと向かってくるソレに対して、俺は更に逃げる速度を上げて追いつかせない。


 どれくらいの時間逃げ続けただろうか。


 とうとう我慢の限界に達したのか、ソレが鬼神のスキルを発動する。


 圧倒的な速度で距離を詰めこちらへと迫るソレに対して俺は勝利を確信する。


「鬼神」


 俺もまた鬼神のスキルを発動し、ソレを迎え撃つ。


 それの持つ金棒が俺の頭を叩き潰すように振り下ろされるその瞬間に俺の剣がソレを両断した。


 何という事は無い。


 ソレとの鬼ごっこの最終に狩った大量のオーガとレッサーオーガーから得た能力値が俺とソレとの力の差を逆転させたのだ。


「ステータスオープン」


 ############

 ステータス


 名前:ジーク

 年齢:12歳

 レベル:1

 職業:簒奪者


(能力値)

 筋力:12892

 体力:11515

 頑強:12528

 敏捷:8234

 魔法:3951


(スキル)

 アクティブ:(Runk3)鬼神_Lv5、(Runk2)スラッシュ_Lv1、発勁_Lv2、(Runk1)硬化_Lv4

 パッシブ:(Runk-)簒奪

(加護)

 木妖精の加護(微弱)

   回復力上昇(微弱)

   呪い耐性(微弱)

   毒耐性(微弱)

   木属性付与

(呪い)

 経験値取得率0%、転職不可

 ############


「疲れた」


 全力で命がけの鬼ごっこを行い、更に負担の大きい鬼神のスキルを使った反動か立っているのも辛い状況だ。


 労ってくれているのかハンナが無言で冷えたオレンジジュースを差し出してくれる。


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