第15話
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えー、うっそー?!
ナナったら、キタニ君の事が好きだったんだっ?!
っていうか、なんでユメミにだけ教えてあたしには教えてくれないのよ。
ナナのケチっ。
そうだっ♪
せっかくだから、キタニ君に教えてあげようっと!
あっ、キタニ君見っけ!
「キタニ君、ねぇ、キタニ君!今ちょっといい?」
「どうしたの?なに?」
「ナナね、キタニ君のこと好きらしいよ。ふふふっ」
「誰情報なの?あんまりいい加減なこと言わない方がいいと思うよ、マユミちゃん」
もう、真面目かっ、キタニ君!
この顔は、信じてないな~?
「いい加減なんかじゃないよ~!実はあたし、ユメミのスマホ見ちゃったんだよね。だから確実。だって、情報源、ユメミだもん」
「確かに、ユメミちゃんはナナちゃんと仲いいからね。でも」
「あたしだって、ユメミともナナとも仲いいよ?でもまぁ、これは勝手に見ちゃったものだけど」
「マユミちゃん・・・・それは」
「でも、キタニ君はユメミが好きなんだもんねー。可哀想、ナナ。ユメミだって知らないと思うけど」
「マユミちゃん、オレはね」
ああもう、みなまで言うな、キタニ君!
大丈夫、ナナの事はあたしに任せて。あたしだって、ナナの友達だよ?
ユメミともちゃんと相談して、ナナの事は励ますから。
でも・・・・勝手にユメミのスマホ見ちゃった事は、謝らないとかな。
だけど。
いくら裏返してるからって、ロックもかけないでスマホ机の上に置いておくなんて、ユメミが不用心なのが悪い。
あたしの事信用してくれてるのかもしれないけど、ちょっと注意しておいた方が、いいかもしれないな。
友達として♪
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「もうっ、マユミったらっ!」
口を尖らせ顔を紅潮させて、ユメミは不満の言葉を口にした。
「酷いよ、マユミ!マユミがキタニ君と仲が良いの分かってたから、ナナはマユミには言わなかったのに」
けれども、そのすぐ後に落胆の表情を浮かべて肩を落とす。
「でも・・・・元はと言えば、確かにスマホをそのまま置いておいたわたしが悪いんだよね。今度から気を付けないと」
「まぁまぁ、そう気落ちしないで。次の記憶も見てみて?」
軽い口調でそう言ってポンッとユメミの肩を軽く叩くと、ドリィは2つ目の『マユミ』の記憶をマシンに投入した。
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う~ん、この際だから、キタニ君はユメミが好きなんだってことを、ユメミには言っておいた方がいいかもね。
ユメミなら、ナナにどう伝えたら一番ナナが傷つかないで済むか、分かるかもしれないし。
分からなくても、一緒に考えたら何かいい案が浮かぶかもしれないし。
あたしだって、ナナの友達だもん。
ナナが悲しむ姿は見たくない。
でも・・・・ほんとはユメミが一番辛いかな。
あたし、頑張って2人を支えないと!
ていうかまずは、ユメミのスマホ勝手に見ちゃった事を、謝らないとね。
「ねぇ、ユメミ!今日どうしても付き合って欲しいんだけど。帰り、時間ある?」
「あっ、マユミ。うん、いいよ。じゃあ、ナナも」
「ナナはダメ」
「えっ?」
「キタニ君の事で、ちょっと話したいから」
「え?・・・・あっ、ナナっ?!」
「ユメミなんて、大っ嫌い」
「えっ・・・・待って、待ってナナっ!」
えぇっ?!
ナニナニ、どうしたのっ?!
ナナとユメミ、ケンカでもしたのっ?!
なんか最近、ナナちょっと暗いなぁって思ってはいたけど・・・・
どうしたんだろう?
【大っ嫌い】って、相当だよね。
何があったんだろう・・・・?
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「マユミ・・・・もぅっ、バカっ」
泣き笑いの顔で、ユメミが呟く。
「人間て、ほんと面倒な生き物だよね。言葉足らずだったり、おせっかいだったり、勝手に勘違いして落ち込んだりさ。まぁ、だからこそ、楽しくて面白くて、愛すべき存在なのかもしれないけど」
呆れたようにそう言いながらも、ドリィの言葉はどこか温かみを伴って優しく響く。
「だから、そんな人間のユメツクリ達が作り出す夢は、何度見たって飽きなくて面白いんだ。残念なことに、見た人間は起きたとたんに全て忘れてしまう事が多いようだけれども。それでも、心の中には残っているんだよ。ユリが使ってるこのマシン。このマシンの中には、今まで『ナナ』が見てきた夢の全てが記録されているんだ。彼らはね、どんな夢だって、消去なんてしないんだよ。それだけ誇りを持って、みんなで作り上げた夢だから。ユメツクリ達はみんな、自分の仕事に誇りを持っているんだ。自分たちが作った夢を見てくれる人間に、最高の夢を見てもらいたくて、そのために一生懸命日々努力を重ねているからね」
「ねぇ、ドリィのお仕事ってほんとは・・・・?」
マシンからマユミの記憶を取り出し小脇に抱えると、ドリィは照れ臭そうに笑った。
「言ったでしょ?僕は【夢の妖精】・・・・なんてね。本当は、『ゆめつくり』の部屋の巡回者なんだ。受け持ってる人間の『ゆめつくり』の部屋に異常が無いか、見回るのが僕の仕事。異常があると、その人間の
「どうして【夢の妖精】になろうと思ったの?」
敢えてのユメミの言葉に、ドリィは嬉しそうな顔をして続けた。
「誰かのユメツクリになるのも楽しそうだなって、思ったんだ。でもね。いつか出会ってみたいって、僕もその一員になってみたいって、思ってしまったから。【Dream Rescue Team】に」
「【Dream Rescue Team】?」
「そのためには、特定の人間のユメツクリになるよりは、巡回者の方が確立が高いと思って。でも、どうやら正解だったみたいだね。キミのお陰で、僕はなれたんだ。【Dream Rescue Team】の一員に。ありがとう、ユメミ」
「え?わたし?」
「それじゃ、ちょっとマユミの記憶を返してくるね」
そう言うと、ドリィはフッとその場から姿を消した。
「【Dream Rescue Team】・・・・?」
静まり返った『ゆめつくり』の部屋に、ユメミの小さな呟きが響く。
9人のユメツクリ達は、まだまだ眠りについたまま。
皆一様に、満たされた笑顔を浮かべて。
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