第14話
「『ナナ』はっ?!」
泣き出しそうな顔のユメミに、ドリィは笑いかける。
「大丈夫。『ナナ』は夢から覚めただけ。今ごろ『ナナ』はちゃんと、目を覚ましているはずだよ。ユメミが『ナナ』を心の闇から救ってあげたから」
「ホントに?」
「大丈夫よ、ドリィは頼りないけど、嘘はつかないから」
ユメミに背中から抱き着きながら、タムが言う。
「お帰り、ユメミ。ありがとう、『ナナ』を助けてくれて」
「ううん、みんなのお陰。わたしの方こそありがとう、『ナナ』を助けてくれて」
嬉しそうに笑い、周りのユメツクリ達に頭を下げるユメミの姿に、イラとユリが言葉を交わす。
「やっぱりそうだよね。おかしいよね、あの記憶」
「うん、そうね。おかしいわね。真っ黒のうち1つは何故だか色が戻ったから良しとしても、残り2つは黒いままだし、こっちも何とかしなくちゃいけないわね」
『ゆめつくり』の部屋の中を歩き回り、全ての記憶のボールの色が戻ったのを確認したドリィが、イラとユリの元へと歩み寄る。
「すごいね。これ全部色戻したの?!さすが、やっぱり『ナナ』のユメツクリ達は優秀だな」
「いや、まだ2個、真っ黒なまま」
「2個?」
「これよ」
隔離しておいた真っ黒な記憶のボールをユリから手渡され、ドリィはその色の黒さに驚きながらも記憶の中を覗き込む。
「う~ん・・・・『マユミ』の記憶を見てみるか」
「えっ?あんた『マユミ』も受け持ち担当だったの?」
「いや、『マユミ』は僕の師匠の受け持ちなんだけど、事情話せば見せてくれると思うから。じゃ、ちょっと行ってくる」
そう言うと、ドリィはその場から姿を消した。
「あ~・・・・疲れたぁ」
気づけば、ノイ、シキ、メア、クスが、ぐったりとその場に倒れこんでいる。
ツンまでもが、床の上にモケモケを広げて伸びている。
それを見たリマが、砂時計を横にして静かに置いた。
砂時計の砂は、もちろん動きを止めたまま。
「そうよね、たまには夢も見ずにぐっすり眠る事も必要ね」
タムが小さく呟けば。
「今回ばかりは、ボクたちも少しくらい休んだって許されると思う」
イラも続けてそう呟く。
「確かに、疲れておかしな夢を作って『ナナ』に見せてしまうくらいなら、ちゃんと休んで元気になって、『ナナ』にいい夢を見てもらいたいものね。ワタシも、どうせなら、いい仕事したいし!」
ユリもそう言うと、マシンの上に上体を投げ出して目を閉じた。
「みんな、本当にお疲れ様でした」
改めて、ユメミはそんなユメツクリ達に、深々と頭を下げた。
『ナナ』を心の闇から救い出す事ができたのは、みんながそれぞれに自分たちの持ち味を発揮して、協力してくれたからこそ。
ようやく安心したユメミもまた、どっと出て来た疲れに襲われ、床に体を横たえると眠りに落ちた。
「ユメミ、起きて」
体を揺り起こされて目を覚ますと、ドリィが記憶のボールを2つ抱えて立っていた。
「『マユミ』の記憶を借りて来たんだ。『ナナ』の記憶が黒く染まった原因を確認するために。きっとそれが、『ナナ』が闇に囚われた原因でもあると思う。一緒に見てみない?」
「えっ?いいの?」
「うん。ユメミは見た方がいいと思うんだ」
よいしょっ、と掛け声をかけて眠っているユリをマシンから少し動かすと、ドリィはまず、黒くなった『ナナ』の記憶をマシンへと投入する。
モニターに映った『ナナ』の記憶を見終えたユメミは、小さく首を振りながら、なにこれ、と短く呟いた。
「だと思って、『マユミ』の記憶を借りて来たんだよ。じゃあ、次は『マユミ』の記憶ね」
そう言うと、ドリィはマシンから『ナナ』の記憶を取り出し、次に『マユミ』の記憶を投入する。
モニターに映し出された『マユミ』の記憶を、ユメミは食い入るように見つめた。
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