三題噺『雪』『椿』『ヘビ』
天の子どもと冬のヘビ
彼は森に住むヘビだった。
でも他のヘビたちは彼をヘビだと認めていなかった。なぜなら、彼は、羽毛に覆われていたからだ。
それに、食べるものも違った。
みんなは虫やネズミなどを食べていたが、彼は草や花、木の実などを食べていた。
それに、彼は冬眠をしなかった。
みんなは寒くなると土の中で冬眠をしたが、彼は冬になっても冬眠をすることはなかった。
雪が降る時は土の中でじっとしているが、それはこの森ではひと冬に一度あるかないかだった。
みんなが冬眠した後の彼だけのお楽しみがあった。
それは椿の花だった。椿の花は冬の寒い時期のご馳走だった。椿の花の甘い蜜が美味しかった。みんなと分け合う事は出来ない、彼だけのごちそうだった。
みんなが冬眠し動いているのは彼だけになってしまった冬のある日、どこからか泣き声が聞こえてきた。彼は声が聞こえた方へ行くと木の向こうに泣いている子どもを見つけた。
彼は子どもという生き物がヘビを嫌っているのを知っていたが、あまりにも泣く子をかわいそうに思い子ども声をかけた。
子どもは空を飛んでいたが急に風が吹いてバランスを崩し、地上に落ちてしまったと答えた。
子どもが背中を向け、畳んであった翼を広げた。見ると所々に土が付き、地面で擦ったところがはげてしまっている。そのせいで飛べなくなってしまったようだ。
ヘビは子どもに声をかける。
「僕の羽毛をあげますよ」
子供は答えた
「でも羽毛をもらってしまったら、あなたは普通のヘビになってしまいますよ。この森に住む、他のヘビと同じになってしまいます」
ヘビはうれしそうに言った。
「僕は仲間が欲しかったんです」
子どもはヘビの羽毛もらい、翼を治した。
ヘビは他のヘビと同じ見た目となって、今までに感じたことのない冬の寒さを感じていた。
子どもはヘビを優しく抱き上げ土の中へ……。
彼は土の中で春になればみんなと仲間になれることを喜ぶ反面、もう椿の蜜を味わえなくなると残念に思いながら、初めての冬眠をした。
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春に彼は目覚めることができるのか、みんなの仲間になれるのか、今はまだ分からない。
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