第33回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画(525文字)

 大事なお仕事

 我が伯爵家は妖精に守られている。

 五代前のご先祖様が森で傷ついた妖精を助けた。 だから、妖精が一族を守ってくれるようになったと伝わっている。

 僕の一族は五年前の王弟一派のクーデター未遂事件で一族郎党処刑されるはずだった。もちろん冤罪だった。勝手に伯爵家の名前を使われたのだ。

 だが助かった。名前が出た以上お咎めなしとはいかず、領地を減らされ、そこから出ることは許されない。

 だが一族は、領地の中で幸せに暮らしている。妖精のおかげだ。


   ☆     ☆     ☆     ☆     ☆


 妖精である私は油断してしまい、森で魔物に襲われ怪我をしてしまった。

 死にかけた私を助けてくれたのは森を所有する当時の伯爵だった。

 彼は手当をしてくれ、食べ物までくれた。そのことに恩を感じた私は、それから伯爵家を守ることにした。

 伯爵は人がよいだけの平凡な人物だった。その人のよさだけで伯爵家を存続させてきた。

 助けてくれた伯爵が亡くなっても、その子どもや孫が食べ物をくれ優しくしてくれたので、私は妖精の力で引き続き伯爵家を守った。      

 今の私の仕事は、五年前に政変に巻き込まれてしまった彼らの平穏な生活を守ることだ。一日を無事に終わらせること。

 一族郎党処刑された彼らの魂を守り、もう死んでしまっていることを決して気付かせないことだ。

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