第31回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画(658文字)
私の進路を決める人
駅を北口から出て少し歩いたところにある交差点に、占い師が立っているのは友だちから聞いて知っていた。
友だちによると占い師は三人いて曜日や時間を変えているらしい。ただ三人の中で一番よく当たると言われている鳥占いの占い師は、不定期に立っていて滅多に出会えないらしい。
南口の方が店も家も多いのになぜ北口?と思ったら、二人は南口にも出ているそうだ。
鳥占いってどうやるのか友だちに聞いても、他人にしゃべると良くないことが起こると教えてもらえなかった。
占って欲しいことなどなかった私だが、高二になると進路について悩んで占いに頼りたくなった 。
お母さんと意見が違う。
お母さんの言うとおりの大学にすれば、就職に苦労は少ないかもしれない。
でも、私がやりたいことは……。
お母さんと喧嘩して家を出て、北口に来てしまった。
夜そこまで遅くない時間なのに、人が全然いない。
交差点まで来ると人が立っていた。よく見ると鳥かごを持った人だった。もしかしてあれがとり占い師?
鳥はカラスみたいだけど、よく見るカラスより小さかった。
近寄って確認してからお金を払う。
話を聞いていた鳥かごの中の子ガラスが「お母さんの言うとおり」としゃべった。
新手の腹話術か。
驚くよりもがっかりした。都合よく、自分の望んだ答えではなかったからだ。お礼を言って元来た道を引き返す。歩きながら少しずつ気持ちが固まり、決心する。
占いではなく自分の人生は自分で選ぶ。
言うとおりにしてうまくいっても、きっと後悔する。
カラスの鳴き声が聞こえたような気がして振り返るが、交差点には誰もいなかった。
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