凛として晴れ
藤和羽流
晴れやかに復讐を!
「お前のお父さん、ロリコン野郎らしいな。きもいんだよブス」
「ほんとにきもい。なんで学校に来たの? 来るんじゃねえよ」
私に投げかけられる言葉は、汚いものばかり。
こうなったのも1週間前、お父さんが幼女連続殺人事件の犯人として全国ニュースで報道され、顔も名前も公開されてしまい、学校でもこの話が伝わってしまったのだ。
今まで仲が良かった友達も、さっきのような有様だ。悲しすぎて、死にたくなる。こういう時、支えてくれるのが友達だと思っていたのに。
毎日の学校は憂鬱だったが、行かないわけにはいかない。
重い足取りで、私は学校までの道のりを歩いた。
2階にあるクラスに入ると、私の机には落書きがあった。
「ロリコン」「しね」「ブス」
家に帰りたくなる思いを押し止め、私は無言で落書きを消し、席に座った。
「痛っ……!? なに……?」
急いで席を立ち椅子を見ると、針が上を向いた状態の画鋲が置いてあった。
近くでクスクス笑っている女子がいる。仲が良かった友達。
「……ねぇ、もうやめてよ」
「いやいや、お前が学校に来るからでしょ。被害者の子たちのためにも死になよ。お父さんがクズならお前もクズだよ。クズは生きてちゃいけないんだよ?」
「……そうなの? じゃあ、あんたもクズだから一緒に死のうよ」
引き出しに入っていたカッターナイフを取り出し、そのままの勢いで、そいつの首元に刃を突き立てた。
意外にもあっさり刃は突き刺さり、そいつの血があたりに飛び散った。私の顔にも血がかかり、とても不快だ。
教室が絶叫の渦に飲み込まれる中、私はそそくさと教室を抜けだした。全力で階段を駆け上がり、3階の女子トイレに逃げ込んだ。
肩で息をしながら洗面所で顔を洗い、ぶるぶると顔を振った。
死んだような顔だった私が、今は生き生きとしていた。心の中を覆っていた暗雲に、光が差し込んだのだ。
先生に見つかる前に、まずはここを出ないと……。
女子トイレから顔を出し、辺りを見渡した。まだ朝ということもあり、人通りは少ない。
覚悟を決めると、私はまた走り出した。
薄暗い階段を駆け上がり、建付けの悪いドアを開け、外に飛び出した。
……屋上だ。ここに来るのは初めて。
転落防止のフェンスを乗り越え、足を宙に投げ出した状態で座った。
……ここ、気持ちいいなぁ。こんな晴れやかな気分で終われるなんて……。幸せだ。
お尻の埃を払いながら、私は立った
「クズーっ、死にまーすっ!」
弾んだ口調で叫び、私は胸を張って飛び降りた。
凛として晴れ 藤和羽流 @syousetubaisuki
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