第5話 中学入学頃

 父はずっと私の所に通って来た。いつもスーパーの袋を下げて来る。半分はお菓子、半分は食品だ。冷蔵庫に入れなくていいような、魚肉ソーセージなんかも入っていた。

「この間買って来てくれた〇〇美味しかったよ」

 私は父と色々話すようになっていた。信頼していたし、ご機嫌を取ってお金をせびるつもりだった。

「そうか。じゃあ、また買って来るよ」

「ありがとう。お父さん、学校で絵具を買わないといけないから、お金もらえない?」

「いくら?」

「2000円」

 お父さんは財布からお金を出す。仕事は何をしてるんだろう。お金持ちなんだろうか。社長とかだったらいいなぁ。


「お父さん、普段はどこに住んでるの?」

「駅の近くに住んでる」

 家賃が高いんじゃないかと思う。お金持ちなのかもしれない。

「一人で?」

「うん」

 そんな訳ないと、子どもながらに思った。

「今度、遊びに来るか?」

「行きたい!」

「じゃあ、今度行こうな」

 私は本気で当てにしていた。こういう約束が果たされることは決してないのだが。


 それから、中学に上がることになった。母は制服やカバンなどは買ってくれた。そうしないと、親がネグレクトしていることがバレるからだ。

「お前は根性あるね。一人で一年以上暮らしてるんだから」

 私は母に褒められて嬉しかった。この頃になると、私は母がいなくても生きていけると思い始めていた。私には父がいるからだ。


 母は男と別れたらしく、そのうち、家に帰って来てしまった。たくさんの洋服を持って来た。私はその頃、母より身長が高くなっていた。

「洋服、借りていい?」

「いいよ」

 私は母の服を着て、化粧をして外に出る。別人になったようで気分がいい。誰も私だと気が付かない。ナンパされたこともあった。車に乗って声を掛けられると、さすがについて行かない。その後はレイプされるに決まってるからだ。


 やばて、私にも彼氏ができた。


 

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