第6話コロッケ

私は夕飯に出たコロッケと格闘している。


テーブルに出されたとき、コロッケが私に話しかけてきたのだ。


「おい、お前俺を食べたら呪うからな」


甲高い声で私に喋りかけてくるコロッケ。


家族のみんなは気づいていないらしい。


どうやら私にしか聞こえないみたいだ。


とりあえず私は、味噌汁、白米から食べ進める。


「お前ごときが食べていいもんじゃないんだよ!なぁ聞こえてんだろ?」


コロッケから私への罵倒。


そろそろ私もイライラしてきた。


何でコロッケに文句言われなきゃいけないんだ。


だいたいコロッケなんてありふれた食べものなんだ。


そろそろたべてやる。


箸をコロッケへと伸ばす。


「おい!やめろ!来るな!!」


怯えたコロッケに私は食いついた。


「ギャァー!!!」


悲痛な声が聞こえてくる。


私はだんだんコロッケを食べるのが楽しくなってきた。


あえてゆっくり少しずつ食べる。


「分かったから!分かったから、やめてくれ!」


怯えたコロッケの声を聞くのが心地よい。


私は残ったコロッケを箸でバラバラにした。


ぐちゃぐちゃとコロッケから音が聞こえてくる。


まるで動物の身体を分解しているようなそんな気分。


コロッケから声が聞こえなくなった。


たぶん死んだのかもしれない。


私は残りのコロッケを一気に口に入れた。


そのとき


「覚えてろ」


口の中から声が聞こえた気がした。


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