第42話「あぁ、勇者よ!死んでしまうとはなさけない!」

「があぁっ……!?」


剣の砕けるのと同時に、後ろのほうから悲鳴が上がった。

すぐに振り返るとそこには、壁に打ち付けられ頭から血を流しているユレイン先生の姿だった。

ゆっくりと、死神が審判を下そうとするように、ユレイン先生へとリンが近づいていく。


「ぐぅ……オォォォォォオオオオッ!!」


ユレイン先生に気を取られている間に回復したのか、オーガが雄叫びを上げる。

オーガがその巨大な拳を握りしめ、俺へと振り下ろす。

【キロ・フレイム】の見様見真似での詠唱。普段扱わない魔法に、必要な魔力量はわからないまますべてを出した。


ゆえに。


魔力は尽きた。もう動けない。立っているのがやっとだ。


どうやら本格的に、俺の冒険はここで終わりらしい。


「――させねぇぇぇっ!」


突如上がる爆発音と同時に、俺の前に誰かが立っていた。

一瞬だけ、倒れるオーガが目に入った。

だがしかし、俺はまぶたが重くなるのを感じて、それに抗おうともしなかった。


魔力気絶マインド・ダウン!?」

「だめ、だめ、だめよ、先生も、メズくんも、いなくなっちゃだめ……!!」

「助けないと……!」


あぁ、聞こえる。


俺を助けてくれたらしい誰かの声と。

慌てふためくヒガさんの声と。

まだ諦めていないらしいダーケさんの声。


だめだ、まだ、まだ諦めてたら。


「あぁ、勇者よ!死んでしまうとはなさけない!」


聞いたことのない声が、耳を打った。さっきの爆発音のときに聞こえたものとはまた別の誰か。

声の主は続ける。


「さすればあなたにもう一度、機会を与えましょう」

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