第37話 状況把握

「メズくん!やばいのが来てるわ」


試合会場に到着すると、ヒガさんが声を掛けてきた。

ずっとここにいたんだろうか、俺が来るのを信じて。

だとしたら、少なくとも逃げなかったとこは正解だった。


「め、メズくん、わたしも力を貸す、からね」


そこにいたのは、ヒガさんだけじゃなかった。ダーケさんも一緒だった。


「ちょっと気に食わないけれど……ここで即席のパーティーを組みましょう。リーダーは、メズくん、貴方よ。私たちは貴方の指示に従うわ」


俺に有無言わせないままに、ヒガさんが全部決めてしまった。


「――俺はまだ状況が把握できていない。何が起こったのか。どんなモンスターが居るのか、教えてくれ」


会場の中から再び激しい地響きがする。今度は震源地が近いからか、揺れがさっき感じたものよりも激しい。


「現れたモンスターは、オーガが三体。加えて、正体不明の人物が、一人。敵は計四」

「ん……?」


おかしい、さっき聞いた話では、Sランクモンスターが現れたと言っていた。オーガは集団でもAランク相当。単体ならCランク。それでも強いが、AランクとSランクの間には絶対的な壁がある。

冒険者じゃないから、急な出来事だったから、見間違えたのかもしれない。


「今対応しているのは、警備にあたっていた冒険者と、ユレイン先生、それとこの学校に勤務している先生たち」


この学校の生徒達は逃げたのか?いや、先生たちが逃したのかもしれない。冒険者の卵に死なれては困るという判断か。

ユレイン先生はさっきまで俺と話をしていたのに、いつの間に追い越されたのだろうか。まあおいておこう。

それと、正体不明の人物が何者なのかも気になる。


「ひとまず、俺たちはオーガを相手にしている人たちの手助けをしよう。残りのやつは先生に任せよう」

「……本気で言っているの?」


俺の発言に苦言を呈したのは、ヒガさんだった。


「オーガ三体は、数もあってAランクに匹敵するわ。見習いの私達じゃ勝てるかどうか……」

「そ、そうですよね……!」

「うっさい、あんたには言ってない」

「ひっ……!?」


ヒガさん、ダーケさんへのあたりが強い。いや、それに突っ込むのはやめておこう。


「やれるとかやれないとかじゃない。戦うために、ヒガさんはここにいたんだろ?俺が来るって信じて。ダーケさんだってそうじゃないのか?」

「……よくわかってるじゃない。さすが私のメズくん」

「なっ……わ、わたしだって信じてたんですよ!」

「うん、なら戦うだけだよ」


ちょっと二人の雰囲気が険悪なのは今は考えないでおこう。まずは実際に状況がどうなっているかを確認することが重要だ。


俺たちは、止まない激しい地響きのする試合会場の中へと足を踏み入れた。

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