第15話 

「それ、本気?」


ユレイン先生は、エイプキングから飛び降りて俺の目の前まで来て言った。


「……っはい!」

少し間をおいてから、俺は勢いよく返事をする。

この人のようになりたい。もっと強く。

どうして冒険者になりたいのかと、自分の中にあった疑念はまだ晴らすことはできないけれど、これだけは言える。

強くなりたい。誰よりも、もっと強く。


「あっははは!」


俺の返事に、先生は爆笑して答える。何か変なことを言っただろうか?

けれど、それ以上考える暇もなく、先生は続ける。


「いいよ、強くしてあげる。この私に、ついてきなさい」


先生は言って、俺に手を差し出した。

差し出された手を俺は握る。

強くなろう。そのために、この人についていこう。

俺は心にそう誓った。


「もしかして、全部片付いてるっ!?」


俺が手を握った瞬間、後ろから声がした。

聞き覚えのある声だ。俺の命を救ってくれた女の声。


「あぁ、見ての通り」


ユレイン先生は後ろに倒れているエイプキングに指をさす。


「それは、よかったです……っていうか、メズくん服泥だらけ!」

「え?」


言われてから、俺は自分の姿をチェックする。それはもう泥だらけだった。

ただ、目立つような怪我はしていないように思える。まあそれに打ち上げられて叩きつけられただけだから、当たり前といえば当たり前のような気もするが……。


「うっ……!?」


不意に、俺は意識が遠のいていくのを感じる。

さっきまでは殆ど感じられなかった、体の節々が痛い。


「ちょっ、メズくん!? もしかして、【ライズ】が切れたから!?」


ヒガさんが慌てて何かを言っているようだが、イマイチ理解できない。

これ以上は無理だ。俺は意識を保とうとすることすらせず、気を失った。

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