第14.5話 彼の元へ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
生い茂る木々の中を、私は全力で駆ける。
時折地面に足を取られそうになるのが鬱陶しい。
彼は、無事だろうか。
正直、【ライズ】であそこまで身体能力が強化されるとは思っていなかった。
詠唱魔法だから、速攻魔法の【ライジング】と違って効果が大きいのはわかっていたけれど、それでもあそこまでの効果があるのは予想外。お陰で、彼が先に行ってしまった。
ユレイン先生によってほぼ無理やりパーティーを組まされた彼。
正直出会った頃、特に初めて彼と一緒にユレイン先生と戦ったときは頼りにならないと思っていたけれど、なぜだか最近は、少しだけ、彼と一緒にいたいと思うようになって来ていた。
(ほんと、どうしちゃったのかしら)
自分でもわけが分からない。彼のどこに惹かれているのか。どこがいいのか。
私は、小さい頃に読んだ素敵な魔法使いのおとぎ話に憧れて、冒険者を志した。
あるときは、村を襲う魔物を倒して。
あるときは、仲間とともに戦って。
あるときは、怪我をした人々を癒やした。
そんな魔法使いに憧れて、私は三系統の魔法の習得を小さい頃から練習してきた。
そしてようやく十六歳になり、冒険者になれる歳になった。
冒険者は、各地を旅しながら、お金を稼ぐことのできる職業。あのおとぎ話の魔法使いみたいに、いろんな人達を救うことができる。
だから、私は冒険者になりたい。
「ウゴオオオオオオッ!」
遠くから、雄叫びが聞こえた。私と彼が聴いたときと同じもの。
「っ……!?」
突然、大きな風が吹いた。それとともに、一瞬だけ人影も。
ドカン、と地響きがする。嫌な予感がする。
「あ、ああ、うわああぁあぁあっ!?」
彼が向かった先から、男の絶叫が響いた。
さっきから、嫌な情報しか入ってこない。少しでも速く、彼の元へ!
私は、森の中を駆ける。彼の無事を祈って。
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