第2話 わくわく才能診断
学校には無事遅刻なく到着し、体育館に集められ、『冒険者育成学校』についての軽い説明を受けた。
といっても入学者の大半はだいたいを把握していることだろうが、念の為だろう。
「『冒険者育成学校』とは、前職が戦闘職である者以外で、冒険者を志願する者は必ず入学をしなければならない。
これは、『冒険者』という職業が如何に危険の多い職業かを学ばせるためである。
在学期間は無期限。
月に一度行われる、『卒業試験』の合格をすることで『冒険者ライセンス』を獲得でき、晴れて『ギルド』の『冒険者』として働くことができるようなる」
先生の説明をざっくりと思い返したところ、こんなものだったはずだ。そういえば、
「学費は1年以内分であれば出世払いが可能だが、1年分の学費を払わずに1年以上在学した場合、借金としてそれを背負い、退学になる」
とも言っていた気がする。
まあ、俺の場合はありがたいことに両親がしっかりと払ってくれているため気にすることではないが。
ともかく、俺はこれにて完全に『冒険者育成学校』に通う一生徒になったわけだ。
小さい頃から夢見ていたことが現実になったことに、未だ現実味が湧いていないが、それ以上にこみ上げてくるものがある。
「それでは『才能診断』を行いますので、順番にお並びください」
喜びを噛み締めていると、そうアナウンスがなされた。
ついに来た、『才能診断』……!ここでどのような『才能』があるかによっては学校での立ち位置が決まると聞く。
『才能』は『冒険者』の強さに直結すると言っていい。
『才能なし』の『冒険者』は食っていけないとされる。
というのも、『冒険者』という職業は大抵がモンスターとの戦闘が基本になる。
そしてモンスターには生身の人間では到底太刀打ちできない。
よって、『才能』の有無、強弱がとても重要視されるのだ。
「次の人、どうぞ」
俺は看護師さんに案内され、診断してくれる先生と目が合う。
「メズ・ティテランタさん……で、あっていますか?」
「はい」
「では、これより血を少しばかりいただきます。
事前に説明があったと思いますが、よろしいですね?」
「はい。あ、左利きなので、右でお願いします」
「わかりました。では……」
俺は右腕を露出させ、採血が始まる。
『才能診断』はその人の血を機械で鑑定し、どのような『才能』があるのか診断する。
診断結果は役所に報告され、証明書が発行される。
ちなみにこの手順は別に役所に行けば誰だってできるのだが、俺はやっぱりこの歳。学校に通い始めるまでは知りたくなかったから、診断を受けていない。
そのほうがなんとなくロマンがある気がするし。
他の人達も同じなのか、ウキウキした様子でいる。
「……ありがとうございます。では、どうぞ。診断結果をお待ち下さい」
「ありがとうございました!」
俺はウキウキしながらその場を後にする。
「診察お疲れさまです。今日は帰って大丈夫ですよ」
外へ出ると、きれいな女性が話しかけてきた。
紫色の長い髪を、ポニーテールをして結っている。
スタイルも、締まるところはしまっていて、出るところはしっかり出ている。
年上のお姉さん、という言葉が似合いそうだった。
おそらくこの学校の先生の一人だろう。
「あ、そうなんですね」
「はい、クラス分けも全員の『才能』が判明してから確定されるので……」
女性はほんの少し恨めしそうに言う。もしかしたら、クラス分けが面倒なのかもしれない。
「あ、ちなみに校内の見学って……」
「すみません、それはできません。今日は授業こそ無いものの、掃除がありますので」
「わかりました。すみません、ありがとうございました」
「いえ、問題ないですよ。良い学校生活を遅れることを……なっ」
女性がニッコリと笑ったかと思うと、今度はぎょっとした顔をする。
「な、なんですか……?」
「い、いえ……ちょっと忘れていたことを思い出して焦っただけです。では」
女性はもう一度笑う。気にはなったものの、これと言って問題はなさそうだしということで、俺は学校を出て家へ帰った。
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