第4話
ユーリの手紙に書いてあった場所を何箇所か廻ってみたけれど、特に何もなかった。異常なし。どこも廃墟で、誰も住んでいない。人ならざるものの気配すらない。
「……誤情報か……いつものこと」
口に出してみると、凄く時間の無駄というか悲しさだけが私を襲いかかってくるようだった。それでも行くしかないんだと、私は廃墟から外へ出ようと足を向けた。
そもそも誤情報なんていつものことで、今まで何回無駄足を運んだのかわからない。
「……」
お母さんも、紗枝も一体どこで何をしているんだろうか……。
「……んっ?」
この廃墟に入った時には何も感じなかったというのに入り口付近で立ち止まって、歩いてきた廃墟内を見直してみるといつもと違って、何か寒気のようなものを感じた。私の奥底で何かを警戒しているような感覚がした。その感覚を頼りに足を向かわせてみれば、
「……」
その場所には人ならざるものに喰われたのか、ただ普通に死んだのか、人間の何かが入り口の隅っこで散らばっていた。
「……もう少し調べてみようかな?」
死体を見たせいか、言葉を口にしなきゃいけないような気分だった。奮い立たせるのは地下施設を出る前にしているはずなのに、今日は一体どうしたのかわけがわからなかった。
「……」
でも――こんな感じで紗枝の髪の毛一本でもあれば、それはそれで何かわかるかもしれない。生きている確証を得られるかもしれない。そう思うと入り口に向かっていた足をまた廃墟の奥へと向かわせた。
何もないと思って、奥まで行っていなかったけれど、何かひょっとしたらあるかもしれない。
その兆しがさっきの寒気。そんな気がした。
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