水着
「あーっ!そういえばユーリ姫も、そんなこと、やってたぞーっ!」
学校の教室でユタポンとユカリンと、前にボクの寮の部屋で聞いた、可愛い女の子の声のことを話していた。
「えーっ?ユーリ姫も?」
「修学旅行でフージ山に登った時に、ユーリ姫の声だけ聞こえてきたんやーっ!」
「えーっ?ユーリ姫も凄いんやな~!そんなこと出来るやなんて...」
「そうやで~!ユーリ姫は可愛いだけとちゃうんやで~!」
でも、部屋の声は、あれから聞くことはなかった。
体を優しく抱きしめてくれたり、キスしてくれてるのは感じるんやけど...
やっぱ、声にするのはむずかしいのかもな~。
「おばあちゃまの声も、感じたことはあったよ!」
「ほんま?」
「うんっ!夜、寝てたら、おばあちゃまの声で、『あやめっち!おばあちゃま、もう行くねっ!』って感じたから、おばあちゃまに『いやや~っ!まだ行かないで~!』って思ったら、そしたら...」
「そしたら?」
「そしたら、おばあちゃまの優しい声で、『じゃあ、まだいるねっ』って言ってるのをはっきりと感じた気した...」
「えーっ!そうなんや!おばあちゃまって離れてたの?」
「離れてたよっ!かなり...ちがう街やったから」
「でも、おばあちゃまなら、あやめっちに、そういうことをしてくれるのもわかるけど、知らない女の子も、そんなこと、するなんて...」
「いや、でも、わからなくもないで~」
「ほんまに?」
「自分の学生の時の、大事な寮の部屋に、新たに入って来た後輩に対して、そういうことをやるっていうのも...」
「その女の子も、その寮の部屋、好きだったのかもね」
「学生の時に過ごした、大切な想い出も、たくさんあったのかもね...」
「ほんまにそうなんやで」
「いろんな良き想い出のたくさんつまった、学生寮の部屋やったんやろな~!その女の子にとって...」
「そうなんやろな~!たぶん、きっと...」
4回生になった。
大学の授業で製作した水着は、先生からもみんなからもめっちゃ好評だった。
それでボクは水着の会社を設立して、販売しはじめた。
泳ぎやすい素材で、泳いでて可愛く見えるデザインの水着。
ボク自身、水着はめっちゃ好きかも。
人魚のミュージカル劇場でお仕事したおかげで、人魚用の水着も製作出来るようになった。
ミュージカルでも、ダンサーさんたちに着てもらえるようになった。
ミールちゃんも、ボクの作る水着をめっちゃ推してくれている。
ボクたち空を飛ぶ人のために、空を飛びつつ、海にも入れる水着を開発した。
水着といっしょに、下着も製作した。
そしたら、遠くの島の人たちからも、下着を欲しいっていう注文も、めっちゃ増えはじめた。
旅行に行って、色んな街で、ボクの下着や水着を見せると、お店の人も、めっちゃ気に入ってくれて、お店に置いてくれる。
香絵ちゃんや空里にも、下着や水着の製作と販売のお仕事も手伝ってもらえることになった。
空里は、ちっちゃい頃から泳ぎも得意で大好きで、空を飛ぶことも同じように大好きだから、空を飛んで、そのまま海に飛び込んで泳げる水着の製作にも、めっちゃ興味あるみたいだ。
香絵ちゃんも、高校の工芸科や芸大で学んできた、オッキナワン島の伝統芸術をテキスタイルで表現してくれている。
そのテキスタイルをオッキナワン島からウァオサッカに送ってくれて、ボクはそのテキスタイルで下着や水着を作っている。
大学の卒業製作も、下着をメインにして製作・発表した。ボクも下着を着けてショーに出た。
服飾にいちばん歴史のある街パーリンに行って、下着と水着のショーをやったら、その街の人たちからも、めっちゃ好評で、「あやめっち」っていう名前で売りはじめたら
「可愛い~」
って多くの人たちから言ってもらえた。
特に、その街の王女様に、めっちゃ気に入ってもらえた。
ある日、その王女様から、お城の部屋へ来るようにと、ボクのところに連絡きた。
「アナ王女様は、あやめっち様の訪問をお待ちになっておられます」
とのメッセージを頂いた。
ボクは緊張しながら、お城に行った。
それから王女様の部屋に案内してもらえた。
トントンってノックしたら
「どうぞ~」
って可愛い声だ。
ドアを開けて部屋に入った。
王女様は可愛いイスに座って、ボクのほうを見て、優しく微笑んでいた。
「お待ちしてました。あやめっちさん。あなたの作ってらっしゃる下着と水着、めっちゃ可愛いから大好きなの。これからも、よろしくね」
って言ってもらえて
「こちらこそ、これからも末長くよろしくお願い致します」
って恐縮しながら答えた。
「それで、学校の寮生活は、どうですか?」
って、アナ王女様はボクに聞いてこられた。
「えっと...寮生活ですか?」
「ええ!寮のお部屋では、楽しくやられてますでしょうか?」
「あっ、はいっ!めっちゃ楽しくやらさせていただいてますーっ」
「それは良かったですわーっ」
「ありがとうございます」
「あのお部屋に備え付けられているベッドの表面、たたみになってますでしょ?」
「えっ?あ、はい!たしかに...たたみですね」
「あの、たたみなところ良きですよね~」
「そうですねーっ」
「昼間、お布団をタンスにしまえば、ベッドのたたみの上でゴロンゴロンゆったり過ごすこと出来て、めっちゃ気持ち良いんですよねーっ」
「あ、はい、本当にそうですねーっ」
「良かったですわねーっ」
「いいお部屋ですーっ」
それから王女様から、この街特製のお菓子をお土産に頂いて、ボクは部屋を出た。
そして、めっちゃ緊張しながら、お城をあとにした。
たぶん、ボクは下着と水着の製作に、いちばん向いている気していて、これからも、この世界の色んな街で、売っていきたいなあ~って思う。
まだまだ行ったことのない街も、この世界にはたくさんあるから、もっと旅もしてみたいなあ~。
夜、寮に戻って、部屋に1人でいた時、ふと
「あれ?もしかして、前、聞こえてきた可愛い女の子の声って、アナ王女様の声だったりして...」
って思った。
「でも、ちがうか...そんなわけないか...」
「そんなわけないことないですよ~」
っていう声、聞こえてきた。
「うわっ!...えっ?...そんなわけないことないって...えーっ?...ってことは...?」
「わたしはアナです...」
「えーっ?...やっぱり...アナ王女様なのでしょうかーっ?」
「そうです...」
「えーっ?」
「先ほど、お城でお会いしましたよね...あやめっちさん」
「えっ?あ、はい!お会いいたしましたです」
「みなには内緒ですけど、私はこのお部屋で勉強していたのです」
「えーっ?そうなんですかーっ?」
「そうなんですよーっ」
「なんで、このお部屋に?」
「学生寮に入ってみたかったのです」
「このお部屋にアナ王女様、いらっしゃってたら、みんな大変だったでしょうに...」
「みな、気付いてなかったみたいですよ」
「えーっ?アナ王女様いるのに、みな知らなかったのですかーっ」
「そうだったみたいですーっ」
「王女様は何を学んでいらっしゃったんですか?」
「デザインですね」
「デザインなのですか」
「ええ!都市環境のデザインです」
「寮から学校に通ってらしたのですか?」
「そうですよ」
「ボクと同じだ...」
「あははは!あの寮は学校に併設されてますから、めっちゃ便利ですもんねっ」
「たしかに...そうなんですよ」
「あっ!そうだ!」
「なんでしょうか?」
「タンスの中に、ピンクのマーカーで、ちっちゃなハートを描いたんですよ」
「タンスの中に?」
「ええ!このお部屋で暮らしていた記念としてねっ」
「えーっ?本当ですかーっ?」
「あとで見ておいてくださいねーっ」
「わかりました!見てみますーっ!」
「じゃあ、行きますねっ」
「えーっ?もう行かれるんですかっ」
そして、アナ王女様の存在感は、このお部屋から、消えてなくなってしまった。
タンスの中に、ちっちゃくて可愛いピンク色のハートを見つけた...
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