美術館

ママのお姉さんは、島の美術館で学芸員として働いている。

空里といっしょに、そのオルセーヌ美術館に遊びに行ってみた。

空里は、まだまだ飛べないから、自転車に乗って、いっしょに空を飛んで、美術館まで行った。


オルセーヌ美術館には色んな絵画や彫刻、展示されていた。

中でも、ボクも空里も好きなのは、海の上でホタテ貝に立っていたり、寝っ転がったりしているヴィーナスの絵だ。

「ヴィーナスの誕生」

っていうタイトルの付けられた絵。

神話の世界で、海で誕生したヴィーナスを描いた絵。


神話に出てくる色んな可愛いキャラクターの彫刻もいっぱい展示されてあって、彫刻を見て行くのも楽しい。


「空里にも、そのうち、羽、ちゃんと付いたら、あの絵のヴィーナスの上を飛んでる、あの可愛いキューピッドみたいに、空も飛べるようになるね」

「はやく空を飛びたいなあ~」


「あれ~?あやめっちと空里ちゃんやないの~?何してんの?こんなところで...」

ママのお姉さん、美術館の中から出てきた。


「あっ!こんにちは!何してるって絵を観に来たんですよ~」

「うわ~っ!そうなんや~!観に来てくれたんやねっ」

「お久しぶりです~」

「ほんまに~な!空里ちゃんも大きなったなあ」

「あははは」

「今、何年生なん?」

「中2です」

「中2かあ!羽の生える時季やねっ」

「そうですねっ」

「もう羽、生えてるの?」

「あっ、ちょっとだけですけど...」

「そうなんや!これからやね!羽の成長するのも...あやめっちは?いくつになったん?」

「15才です~」

「えーっ!15才なんやあ!...あっ、そうや!ちょっと2人で美術館の受付をしといてくれへん?」

「いいですけど...」

「ちょっとだけ用事で出掛けてくるわっ」

お姉さんは美術館を出て行った。



ボクと空里で、美術館の受付のお仕事を頼まれた。

それから、しばらく美術館を訪れるお客さんの応対を2人でしていた。

パンフレットやグッズも売っていたから、その接客と販売のお仕事もやった。


「あれ~?あやめっちと空里ちゃん?」

って声してきた。

見たら、サフラッコ島の由菜お姉ちゃんのアクセサリーのお店に来ていた、その時、女子高生のお姉さん3人組だった。

「うわ~、やっぱり、あやめっちと空里ちゃんだあ~。久しぶり~」

「あっ、こんにちは~!」

「今日は美術館で働いてるの?」

「そうなの!よく、わかりましたねっ!」

「その時に出会った可愛い子どもたちのことって、よく覚えてるのよね~」

「えーっ!凄い記憶力~」


「アクセサリーは作ってる?」

「作ってるよ。お姉ちゃんのお店に置いてもらってる!」

「お姉ちゃんのお店だったのねっ!あのサフラッコ島のお店は」

「そうだよ!『あやめっち作』って書いてあるから、すぐわかるよ。空里も『クーリッシュン』っていうの作ってるよ」

「じゃあ、またアクセサリーのお店にも行ってみるねー」

「うんっ!ぜひ行ってみてね!新しいのも飾ってあるから」

「それはめっちゃ楽しみ...じゃあ、今日は絵を観てくるねっ」

「行ってらっしゃ~い」

3人のお姉さんは美術館に入って行った。


「あやめっちは今、何部なの?」

って空里は聞いてきた。

「高校で?」

「そうだよ」

「高校に入って、最初はマンドリンっていう可愛い楽器を演奏する部活だったんだけど...」

「マンドリン?」

「空里、マンドリンって知ってる?」

「聞いたことはある!見たり触ったり演奏したりしたことはないけど...」

「めっちゃ可愛い音色なんやで~」

「そうなんや」

「形も可愛くて、2弦をいっしょにピンッて弾いて演奏するんやけどな」

「2弦いっしょに?」

「ピックで、上から下へ、下から上へって弾くと、めっちゃきれいで可愛い音色するんやで~」

「可愛い音色?」

「空里の声みたいな可愛い音色かな」

「ピヨョョョ~ンって感じ?」

「あははは、ちょっと違うけど、まあ、そういう可愛い感じ...」

「どんな感じ?口で言ってみてっ!」

「えーっ!口で?」

「どんな音色?」

「えっとね...ピヨョョョョ~ンって感じ?」

「いっしょやんっ!空里の言ってるのと」

「あっ、そうやったっけ?」

「そうだよ~」

「あっ、わかった!ピロロロロロ~ンって感じやわ!」

「あっ、ピロロローンって感じなんやな?」

「いや、ちょっと違う...」

「えーっ?違うのーっ?」

「ピョ~ンっていう感じかも」

「ピョ~ンって感じに弾くんやな」

「そやな」

「マンドリン部なんや」

「あっ、でもな!」

「えっ?どうしたん?」

「最初は葵ちゃんもいっしょにマンドリン部に入ってたんやけど...」

「最初は?」

「それから、ママにミシンをもらったやんか...それで高校で新たに葵ちゃんといっしょに服飾部をつくってん」

「えーっ!そうなんや!服飾部?」

「そうやで」

「服飾部って何するん?」

「服を作るねん」

「えーっ!いいなーっ!」

「そやろ?」

「あやめっち、ミシンで服を作るん?」

「そやで!葵ちゃんもいっしょになっ」

「ええなーっ!空里も入りたいっ!あやめっちといっしょに服飾部」

「はよ高校生になり!」

「はよは、なられへんで!あと2年はかかる!高校生になるまで」

「そやな!」

「空里も、あやめっちと同じ女子高に入れるかな?」

「どやろな?」

「あやめっちも入れたんやから、空里も!」

「あははは、うちの女子高の工芸科に入るの?」

「まだ、わからへん...」

「そやろな~!」


しばらくして、3人のお姉さんたちは、ボクと空里のいる入口の場所まで戻って来た。

美術館の中を観てまわって、帰ってきた。


「『ヴィーナスの誕生』の絵は、いつ見ても良いね~!うちら、3人とも、あの絵、大好きなのっ!」

「そうですよね~!きれいなヴィーナスと、可愛いキューピッドの絵で...」


「睡蓮の絵も良いよね~」

「マネミネモネさんの絵ですね」


3人は、パンフレットとポストカードとポスターを買っていってくれた。

「この美術館でも、よく働いているの?」

「いえ、今日はたまたまなんですけど...」

「あっ、そうなの。うちらは、よくこのオルセーヌ美術館にも来てるのよ。じゃあね~」

「バイバイ~。また、いらしてくださいね~」


美術館での受付・応対のお仕事も、好きな美術に囲まれて、めっちゃ楽しくお仕事出来た。

サフラッコ島で出会った女子高生のお姉さんたちとの再会もあった!


ママのお姉さんも美術館に帰ってきた。

「ありがとうね~!あやめっちも空里ちゃんも」

「美術館の受付のお仕事も面白かったよ~」

「ほんと?」

「美術好きやから、好きなものに囲まれてて...」

「それなら良かったわっ」

「来る人も、みんな美術を好きな人ばっかりやから、話も合うし」

「そうよね~!空里ちゃんも、美術好き?」

「いちばん好きなのは水泳で、美術は、2番目くらいに好き~」

「いちばん好きなのは水泳なの?」

「飛び込んだり泳いだりするの好きっ」

「そうなのねっ」


「あっ!そうだ!おみやげ買ってきてあげたわよ」

って言いながら、ママのお姉さんは、買い物カゴから、何かの包みを取り出した。

「これ、何だと思う?」

「クイズなの?」

「そうよ!正解した人にあげるわよ」

「えーっ!おみやげじゃないのーっ?」

「さあ、何でしょうか?」

「何かのフルーツ?」

「何の?」

「え~とっ、ブドウみたいな...」

「ブブーッ」

「うわっ!やったあ!正解か?」

「なんでやねんな...正解やったらブブーッとちゃうやろ」

「空里の出すクイズやと、正解の時に、ブブーッて言うからなっ」

「ブドウでは、ありませんっ」

「ヒントは?」

「え~と...白くて丸いです」

「あっ!タマゴ?」

「何のタマゴ?」

「え~とっ、孔雀のタマゴ?」

「ピンポ~~ン!」

「ちがうのか...」

「なんでなん?ピンポ~ンやで!」

「空里の出すクイズやと、ピンポ~ンは、いつも、はずれやからな~」

「じゃあブブーッ!」

「うわっ!当たった!孔雀のタマゴなんっ?」

「そう!孔雀のタマゴっていう銘菓」

「うわっ!ほんまにタマゴみたいやんっ」


「そやろ~!食べてみて!」

「めっちゃ美味しい!」

「見た目もタマゴみたいやけど、中もなんとなくタマゴっぽい」

「そやろ~!」

「ありがとう~」











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