第13話 『不審者』だ!!!


日向は先ほどヘイデンに言われた通りに、ガッチャンとスライドを引いた。別に難しくはないが、スライドの重さが緊張感を高めた。


「よし」


本日2度目の銃に少しずつ愛着が湧いてきた日向は、心の中で「頑張ろうね!」と銃に話しかけた。

銃は相変わらず雨上がりの雲一つない太陽に照らされ、ピカピカしていた。



   「パァン」

日向が撃つ前に、ヘイデンが撃った。彼の持つ四角いシンプルな銃からは、煙が出ていた。


「1番右端の、足が遅いやつなら多分君でも撃てる。」

そうヘイデンに言われ、右端のゾンビを見た。


そのゾンビは女性のようで、ボサボサの髪の毛は肩くらいの長さまで伸びていた。

1度目のゾンビとは違って、体が細く当てずらいかと思ったが、距離はもう20mほどだ。うかうかしてられない


日向は1度目に銃を扱った時のことを思い出した。あの時はたった一人で本当に緊張したけれど、今回は心強い仲間が2人もいて不思議と怖くなかった。


深呼吸をし、まっすぐに銃をゾンビの頭に向けた。







「「パァン」」



日向の撃った弾は、ゾンビの頬あたりをかすめた。早速幸先がいい!


日向は先ほどの成功体験を思い出し、自分の中に自信が湧いてきて自然と口角が上がっていた。


銃をぐっと握りなおし、引き金に指をかける。








「「パァン」」



やった!2発目でなんと右あごに当てることができた!

だけどゾンビはまだ倒れない。やっぱり頭に当てないとだめみたい…


それでも日向はどこかワクワクしていた。今回は、日向の中に余裕がありいつしか銃を撃つ楽しみが生まれてきていた。


日向は眉をよせ、右目で照準を慎重に合わせる…









「「パァン」」





見事!日向の撃った弾はゾンビの頭にあたり、後ろにバッタリと倒れた!!

日向は静かに喜んだ。やったね


「すごいな!3発でしとめたのか!」

「えへへ」

隣で見ていたヘイデンに誉められ、嬉しさと恥ずかしさで日向の頬が少し赤くなった。


波に乗っていた日向は、次のゾンビを…と思っていたが、

日向が1体のゾンビを倒している間に、アーサーとヘイデンの2人で2体倒し、その後すぐにアーサーが最後の1体を倒したので、日向が出る幕はなかった。



2人は早々に武器をホルスターに戻すと、颯爽とフェンスを乗り越え、内側に入った。



「あぁ…私も早く銃を撃ってみたい!」

日向たちがフェンスの内側に戻って来ると、紫郎が羨ましそうに日向の銃を見ていたので、日向も微笑んだ。



「そういえば、アーサー、さっき叫んでたって…?」

とヘイデンが聞くと、アーサーははっと思い出し、

「そうだ!あいつ!どこ行きやがった!!」

と周りを見渡しながら叫ぶと、上から「ガラガラッ」と扉を開ける音が聞こえ、全員で上を見た。


……なんと!男が3号棟の窓から侵入しているではないか!!


しかもその部屋は先ほど入った私たちの生活部屋だ!!



「くっそ!逃がさねぇ…!」と言いながら、アーサーは一目散に3号棟に向かい走って行ってしまった。


「私たちもカバンを置いているのでは!?」

と紫郎が言い、日向も思い出した!

そうだ!さっきあの部屋に荷物を置いたんだった!


「2人は先に行っててくれ!」とヘイデンが言うので、日向と紫郎は自分の荷物のために3号棟の3階へ向かった。




_________________________________________________________



アーサーは全速力で走った。


午後1時、いつも通り仕事ゾンビの駆除をし終え帰宅しようかと思っていると、突然足音が聞こえた。

アーサーは急いで木の影に隠れると、なんと廃墟になった家から男が飛び出してきたのだ!


この島でこんな廃墟にいるのはゾンビしかいない。ナイフを投げようと太もものホルスターに手をかけたが、その姿はどう見ても生きている人間であった。



軍服を着ているわけではなく、ただの一般人の服装のその男は、ふらふらとそのあたりの廃墟を徘徊している…

こんなことは初めてだったアーサーは流石に戸惑ったが、一応男の跡をつけていると、男の前にゾンビが現れた。


驚いた彼は、そのまま一目散に走り出したのだ!!



アーサーはそのまま彼を追っているうちに、彼がまっすぐ南区に向かっていることがわかった。

迷い込んでいる様だったのに、なぜ南区の方向がわかるのかは分からなかったが、その男に危険を感じたアーサーは後ろから「おい!待て!!」と叫んだ。


だがこちらを振り向かず、彼は走り続けていた。そんなことをしているうちに、アーサーは後ろにゾンビが2体…3体と増え、5体ものゾンビを連れてきてしまったのだ。


奴がフェンスに乗り込んだところまでは見たが、そこから見失っていた。まさか壁を登るような野蛮な奴だとは…





が逃げる前に捕まえてやる!!

そう思い、左手にナイフを構えながら、3号棟の3階の自身の部屋の扉をバンッ!!と勢いよく入った!!



「おい!不審者!とうとう追い詰めたぞ!!」


そう叫びながら中に入ると、

隠れることもなく、先ほどまで追いかけていたは、まるで何事もなかったかのように勝手にリビングの椅子に座り、手に持った大きなおにぎりにかぶりついていたのだ…







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ご覧いただき、ありがとうございました!

今回で新キャラが1人出てきました☺️アーサーが追いかけていた男は何者なのでしょうか…?


皆様の応援のおかげでいつも楽しく投稿させていただいております!ありがとうございます!


カクヨムさん、いつもサイトの運営、管理などありがとうございます。


読者の皆様、いつも読んでいただきありがとうございます。次回も楽しい物語となっておりますので、お楽しみにお待ちください☺️


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