第12話 【ナイフ】を投げる男…


ヘイデンが勢いよくドアを開けると、そこにはリビングが広がっていた。

壁はコンクリート、地面はフローリングが敷かれており、左には洗濯機、右には壁に沿ってキッチン台や食料が置かれている。

そして、正面奥にはダイニングテーブルと椅子が四つ机を囲んでいる。なんともシンプルで整頓された部屋だった。



だがヘイデンは首を傾げながら、不思議そうな表情をしていた。

「おかしいな…あいつ今日の予定なら、もうとっくに帰って来てる時間なのにな…」


そのままヘイデンは他の部屋の扉をノックしてみたが、どうやら誰もいないようだ。

「仕方ない、ちょっと様子を見てくるから…」とヘイデンが言いかけた時…


突然、外から「おい!!待て!!」と大きな叫び声と同時に、「ガシャガシャン!」と何かが壊れるような音が聞こえた。


その音を聞いたヘイデンは、

「…なんかあったのか?」と怪訝そうな顔つきで玄関に戻ってくると、

「その辺に荷物をおいて、一緒に来てくれ、なにか問題があったらしいな」


といいながら、先に外に出ていってしまった。


日向と紫郎は彼の後を追うべく、急いでその場に荷物を起き、部屋を後にした。




二人はヘイデンを追いかけ、廊下の階段を1階まで駆け降りると、


なんと、正面にあるフェンスが上から押しつぶされたようにへし曲がっていた…



「なんだこりゃ!!」

想定外のことが起きたことで、ヘイデンも驚きの声を上げている


…さっき「フェンスが壊れない限り大丈夫だ」と言っていたのに、こんなにもタイミングよくフェンスが壊れるのだろうか…



「やはりバリケードが必要なのでは…?」

紫郎がヘイデンに聞こえないように日向に話しかけてきたので、日向も静かにうなずいた。




「おい!!どうした!!」

遠くから走ってきている男性にヘイデンは声をかけた。


「不審者が現れたんだ!!」

そう叫ぶその男は、22、3くらいの年齢で、上の服はネックのついたタンクトップにアームカバー、下の服はモスグリーン色のズボンにロングブーツを履いている。

腰にはカーキのポシェット、右の太もものホルスターにはナイフが3本付いており、正直にいうと少し変わったファッションだった。



すると、その男の後ろからヨタヨタと走ってくるが…… 5体もいる!!!!



「まずい…奴らに見つかったのか…!!」

ヘイデンはゾンビの方を見て目を細めた。


「早く倒さないとフェンスの中に入られるのではないか!?」

紫郎は日向の方を見ながら心配そうにそう言った。


「そうだ!」

すると、ヘイデンは何かを思い出したように左の腰につけていたホルスターから銃を取り出した



「あっ!!」

日向は見覚えがあるその銃を見て声をあげた!


そう、その銃は先ほど日向が5発撃った、いかりの刻印がついた銃だったのだ!



「これをバリーさんから預かっていたんだ。君がこの銃でバリーさんを助けたんだろう?」

とヘイデンからお礼を言われ、日向は少し嬉しくなった。


「だから、君も一緒に戦ってくれ!!」

と日向の意見は聞かずに、突然銃を押し付けるように渡され、「あっえっ…」と日向は困惑した。まぁお礼を言うためだけに銃を出すのもおかしい話だが、まさか今日のうちに2回も銃を扱うとは思っていなかった。


「日向の戦ってるところを近くで見れるのか!!楽しみだ!」

と紫郎も期待の目でこちらを見ている…


「わ、わかりました!」と日向も迷いを捨てて頷くと、ヘイデンも真剣な表情ながらニコッと笑った。


「この銃は15発入ってる。さっきはバリーがスライドを引いた状態で渡したらしいな…怪我していて仕方がなかったとはいえ、リスキーなことするよな…」

ヘイデンが顔をしかめながら首をすくめた。


「スライドって?」

よく知らない銃の単語に日向は首を傾げた。


「あぁ、本来ならスライドを引いて弾を装弾しないと銃が撃てないんだ。」

…そういえば、さっきは引き金を引くだけで銃を撃つことができた。確かに見ず知らずの人間にその状態の銃を渡すのは暴発の可能性もあって危険だ。



「だから、今からスライドの引き方を教える。」

今後この銃じゃなくとも、ハンドガンを使うなら知っておく必要があるからなと付け加えながら、日向の銃を指差した。


「右手で銃を持ったら、左手で上の金属の部分だけを引くんだ、少し重いかもしれないが、慣れたらすぐできるさ。」

といいながらヘイデンはジェスチャーをして、日向にスライドの引き方を教えた。


「それじゃあ、早速俺らも行こう」




ヘイデンと日向は、へし曲がってしまったフェンスをまたいで外に出た。


すると、先ほど走ってきていた男がへし曲がったフェンスの手前で立ち止まると、

https://kakuyomu.jp/users/konomi33/news/16817330648525116160


右の太ももについているホルスターから、タクティカルナイフを取り出した。

「アーサー!手前のをたのむ!」

とヘイデンが言うと、アーサーと呼ばれたその男は返事もなく

「ちっ」

と舌打ちをしながら、右手でナイフをぶん投げた!


 〈ブンッ〉


ナイフは風を切り、まっすぐにゾンビの頭に向かって飛んでいくと、15mほどの距離があるのにも関わらず、見事に頭に突き刺さった。


「すごいな!」

紫郎も感激の声を漏らしていた

だが、威力が足りなかったのか、ゾンビはふらついたが、その時点ではまだ倒れなかった。


それを見越してのことか、ゾンビの頭に1本目のナイフが刺さった一秒後には2本目のナイフがゾンビの頭に突き刺さっていた。

流石に2本もの鋭いナイフを喰らったゾンビは動きが止まり、後ろにバッタリと倒れた。



アーサーのナイフをなげる威力と命中率、さらには鋭い判断能力まで、全てが正確だった。



そんなすごい技を目の当たりにして驚いていた日向だったが、

「きてるぞ!」とアーサーに言われ、はっと我に帰った。


そうだった、紫郎と同じように見ていたが、自分は紫郎とは違い、銃でゾンビを倒すという仕事が与えられていた…



続く…


☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡


ご覧いただきありがとうございました!

途中へんなところにURLが(笑)あるのですが、URL先に挿絵のイラストを描きましたので、よければご覧ください☺️今回はアーサーのイラストを書きました。

ちょうど走ってきたところを書いたので、文章の途中に配置しました😂


ここ最近でありがたいことに読んでくださる方が増えて、とても嬉しく思っております!本当にみなさまありがとうございます!


カクヨムさん、いつもサイトの運営管理、ありがとうございます!


読者のみなさま、いつも応援いただき、ありがとうございます!次回もお楽しみください

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