第9話 わがままな上官…





部屋に入ると、バリーはヘイデンの肩を借りながら、脚にローラーがついているオフィスチェアに座った。


「早いところ診てもらった方がいいっすけど…あの子達のことがそんなに気になるんですか?」


ヘイデンは眉をひそませてそう言ったが、まさしく私は彼女たちのことが…いや、彼女達をここに呼んだの事が気になっていた。



「…今から上に電話する。彼女たちの相手をしていてくれ。」

と、ヘイデンに言うと、何か言おうとしていたが、バリーの頑固さを知っているからか

ため息を吐きながら首を振った。


「分かりました…」と言うと、静かに部屋を出ていった



バリーは深く深呼吸すると、自分の上官じょうかんに電話をかけた。


上官はバリーの上司である。

5年前にこの島のゾンビを倒す部隊が結成されてから、上官は本部で指令を出す係として任命された。


初めの2年くらいは真面目にやっているように見えたのだが、その後こちらへの人員や武器調達など、分かりやすく資金を減らし始めたことで、

バリーはすこしずつ上官に対する不満が増えていった。



バリーは一つ考えていることがあった。

以前こちらから電話をしたのは6月の初め頃、「人員を手配してほしい」と連絡をしたのだが、

それからひと月の間、軍人が新たに派遣されることはなかった。だが、その結果がだとするなら…?




すると突然、電話が繋がり、白々しい態度の上官の声が聞こえた。

「バリーか、どうしたんだ?」

どんな理由かはわかってるはずだが、「どうしたんだい」なんて聞いてくる上官にバリーは眉間のしわを寄せた。


…だが、ここで感情的になってはいけない


「こんにちは、アルフレッド上官」

何でもないかのように挨拶をし、上官の白々しい演技を聞く前に、早々に本題に入ることにした。



「今日の昼頃、そちらのヘリコプターが来られたのですが…」

「あぁ、送ったね。」


「どうやら間違えた人物を連れてきてしまったようです。帰りのヘリコプターの要請と、の手配をお願いします。」



軍のヘリコプターが乗せる人物を間違えることは今まで1度もなかったが、

彼女たちがこの島に来たことが間違いであってほしいと願いながら、そう言った




「いいや、間違ってはいないさ。高校生たちのことだろう?


人手が必要ならば、軍からわざわざ手配せずとも、ゾンビを倒すのに丁度いいのでは無いかと思ってね。」


そんなバリーの願いも儚く、相変わらず身勝手な上官の態度には呆れを通り越してただただ無気力を感じた。



「一般人を巻き込むのは軍のルールに反しているのではありませんか。

それに、何度も言いますがゾンビは非常に厄介で危険な怪物です。」

「いやぁ、一般人を巻き込んでいるわけではない。彼らは2ヶ月間の“アルバイト”として雇っただけだよ。」



先程助けてくれた彼女が言っていたことは本当だったみたいだ…


しかし、まだ高校生の彼女たちによりにもよって仕事の手伝いをさせるだなんて…



「それに、今は数年前と違って、ゾンビで溢れかえっているわけじゃないんだろう?

彼らにも銃の扱い方を教えてやってくれ、最近の若い子たちは飲み込みが早いと聞くからなぁ…」

「…」


上官だってゾンビの事や島の事を知っているはずだろう。なのにゾンビを雑魚の敵だとでも思っている…俺たちがどれだけ命を背負ってやって来たと思っているんだ……

上官てめぇは椅子に座ってのうのうと生きてるだけだろうが…!!



そんな怒りがバリーの腹にフツフツわいてきた。

高校生のことや、自分の体調のこともあり、今日はやけに感情的になっている…



バリーは電話を持っている手を怒りで震わせた…


だが、あくまで上官がこの島の食料や武器、ヘリや船までもを動かしている。もしここで上官に逆らえば、仲間や、今いる高校生たちの命が危うくなる……


抑えろ…自分…

仲間の命を背負っているんだぞ……


数秒の沈黙が続いたあと、バリーは精一杯抑えた感情で、声を出した。

「……わかりました…」

「給料は先に振り込んだ。迎えは2か月後の8/31だ。それまでよろしくやってやってくれ。」

そういうと、上官は挨拶もなく、ガチャンと電話を切った…





「くそっ!!」


ダンッッと音を立てて机を叩いた。自分たちの仕事をけなされることが許せなかった。

いつも死んだ仲間の事を思い出す…それが責任感の強いバリーの心を突き刺し、バリー自身を苦しめる。。。


もうこんな苦しみは終わらせたいのに…







☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡




ご覧いただき、ありがとうございました!


今回はバリーの感情強めに書きました。責任感の強さは、時にその本人を締め付けてしまう

そんな感情を描きました。

責任感の強い人間は社会ではきっと素晴らしく見えるのでしょうけれども、本人は苦しいんじゃないかな…となんとなく思います。


みんなそれぞれの立場があるので、一概に責任感感じなくていいよとは言えませんが、ある程度力を抜く時間も大事にされてください(^^)


私の物語でも読んで…ね☆



カクヨムさん、いつもサイトの運営、管理をありがとうございます!


読者の皆様、いつも応援いただき、ありがとうございます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る