第2話 まさか『怪物』のいる島だったんですか!? そんなの聞いてません!

「ハァ…ハァ…」



軍人のバリーは家の壁にもたれながら激しく息を切らしていた



「くそっ…

今の発砲はひとつも当たらなかった… だが、これで誰かが気づくはず… それまでこの体でどうしのぐか…」


先ほどの発砲はバリーが仲間に気づいてもらうために撃ったものであった。

だが彼の体はボロボロで、誰かが駆けつけない限り、この状況で逃げるのは無理だとバリーは悟っていた



バリーは、痛みで震える体を落ち着かせながら、必死で考えを巡らせていると、なんと!人がこちらに向かって走ってくるのが見え、バリーは心の奥の心臓がドクンと強く脈打つのが聞こえた。

——これできっと助かる…!


「大丈夫ですか!!」


だが、思っていた人とは違う人間が走って来ていることに、早々に気がついた。

——襟のついたシャツに赤いリボン、それにリボンと同じ色の膝まであるスカートを着てる…

腰まである紅茶色の髪をなびかせて走ってくる彼女は、どうみても学生だった。


彼女に気づいたバリーの心には疑問と不安がよぎった。

なぜこの島に一般人である彼女がいるのか。どうしてにいるのか…



今の状況をよそに、バリーは彼女に質問するしかなかった。


「君、なんでこんなところにいるんだ?」

「ハァ、ハァ…えっ…えぇっと...」


彼女はバリーにそんな質問をされると思っていなかったからか、息を切らしながら口ごもった。


「えぇと…その、

それより!銃声が聞こえて…」


バリーは少女にそう言われ、はっと自分の今の状況を思い出した。今は彼女に質問をしている余裕などないに等しい。


「そうだった、君に手伝ってもらいたいことがある!」

そう言うと、彼女はバリーの目をしっかりと見ながら、コクコクと小さくうなずいた


バリーは左手で力の抜けた自分の右手から黒い物体を取ると、少女に差し出しながらこう言った



「この銃であの怪物の頭を撃ってくれ!!」






________________________________________________________________________________________________________




日向は目の前に差し出された銃に驚いた。生まれてからずっと日本で安全な毎日を過ごしてきたから、銃を見るのは初めてだった。



そして怪物????

真剣な顔で言う30代くらいの軍服を着た男性がフィクションでしか聞いたことのない言葉を言っている状況に日向は困惑した。



「あの…怪物って…?それに、銃なんて撃ったことないですし…」

聞きたいことが山積みの日向は困惑してしどろもどろになりながら伝えた。


「撃ち方は私が教える。この腕じゃまともに照準が合わないんだ」

というと、軍人は自身の右腕を横目で見た。

彼の右腕はあぐらをかいた右ふとももの上に乗せられていたが、だらん と力が抜けていて、どうやら自力で動かせないみたいだ。


日向が軍人の右腕を見ていると、帽子で影になっている軍人の口元が動いた。


 というのは、詳細は言えないが、きっと見たらわかるだろう」



軍人はそう言いながら顎で道路の方をさしたので、日向は恐る恐る道路の方を見た


〔 https://kakuyomu.jp/users/konomi33/news/16817330647931878049 〕



ザリザリッ…



ザリザリッ…



〔 https://kakuyomu.jp/users/konomi33/news/16817330647931885659 〕



「ヒッ!!」



…その怪物は、肌は青緑色に変色し、目は白く、口をだらんと力なく開けていて、身体は骨張っている…というよりも、骨に皮がついているだけの状態に近い。

口元からは“赤黒い何か“がびっしりと胸までこびりついていた……

そして、その怪物はどうやら『人間』のようで、頭からは黒髪が生えており、ボロボロになった服をきていた。


怪物は、ゆらゆらと左右に揺れながらも、時折何かの発作のように、目を見開いて顔を痙攣させ、左足を地面に引き摺って歩いていた。



日向は口を両手で押さえ、怪物を注視しながら一歩二歩…とその場を後退りした。


「静かに。今は俺を見失っているが、人間を見つけるとこっちに向かってくるぞ」軍人が衝撃を受けている日向に向け、淡々とそう言った



「あの怪物を…銃で倒すんですか…?」



日向が怪物から見えない位置に隠れ、恐れながら言うと、軍人は日向の目を見てうなずいた。

「もしあの怪物に追いつかれたら、私たちもああなってしまう」


「ひぇっっ…」

日向は軍人の一言に、恐れがさらに大きくなり、心臓がどくんどくんと早くなっていくのを感じた。



軍人は何か焦っているようで、日向の感情などお構いなしに、早口で続ける。

「ここであいつを私達の命が危ない。」


この軍人を安全なところまで連れていってあげるつもりだった日向は、まさか怪物と戦うことになるなんて思ってもいなかった。


「あ、あの…それなら見つからないところに隠れた方がいいんじゃ…」


怪物がどんなものはわからないが、こういうとき戦うよりも逃げる方がいい気がした日向は、そう提案したが、軍人は首を降った。


「いや…逃げても、隠れてもダメだ。近くに来たら人間の臭いで居場所を気づかれる」

「そ…そんな……」



ここで怪物を倒さなければ、軍人も日向の命も危なくなる。


そして今、銃が撃てるのは



つまり、

軍人を助けようと日向がここに来た時点で



運命は決まっていたのだ。







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