リゾートバイトに来たら『ゾンビ島』でした

風龍このみ

第1話 リゾートバイトをしに来たんですが…



「なぁ、知ってるか?」


「ん?」


「3年前の夏から封鎖してるキノランドのことだよ」



「キノランド?

八十八ベイ国の政府が関係してるって聞いたが…そんなのこの国にいるやつは大体みんな知ってるだろ」



「いやいや、それは以前からある話だろ?もっと最新のでよ…


実は、八十八政府がキノランドを封鎖したのは、

やばいウイルスが蔓延して、島の人間ほとんどがゾンビみたいになっちまったかららしいぜ」



「ゾンビぃ?にわかには信じ難いな…」


「ちょうど3年前の夏に、この島の観光船も近くで行方不明になってるし、蔓延を防ぐためなら、なくはない話だと思わないか?」



「ハハッ、あいつは何かの事故で行方不明になったんだろ?

それに、島でウイルスが蔓延したとしても、船ならすぐに逃げれただろうし」




「いや…それが、もし八十八軍によって港を封鎖されていたんなら…?」






2022年7月1日


島の南端にある建物の屋上からヘリコプターが飛んでいった。


その建物の屋上に残された二人は、間も無くして非常階段を降り始めた







「うーん…」

今日からアルバイト生活が始まる!という期待とは裏腹に日向ひなたは困っていた。


一つ上の先輩である紫郎しろうと共に日本ニッポンから八十八ベイ国までの長い距離を飛行機で移動した後、ヘリコプターでこの島までやってきたのだが、

ヘリコプターの乗員は話をしないどころか、一言も言葉を発しないまま私たちを下ろし、さっさと行ってしまったのだ。



ヘリポートのある屋上にも誰かが待ってるわけではなく、とりあえずこの7階建ての建物の屋上から脱出するために、2人は長い階段を降りていた。




「一体アルバイトというのはどこにあるんだ?」


紫郎が眉間にシワをよせ、口を尖らせながら日向に話しかけた。


階段とエレベーターと聞かれれば、問答無用でエレベーターに乗っていたであろう紫郎は、日本からの長旅にもかかわらず、暑い日差しの中で、この長い階段を降りることに不満と疲労を感じていた。



「う~ん…私もよくわからなくて…」

きっと紫郎が着物を着ていなければ、そこまで疲れなかったのではないかと思いつつも、日向は自分の後ろをついてくる紫郎にそう答えた。


「紫郎先輩は何か知ってますか?」

「知ってたら階段なんて使わないぞ。」


紫郎のわかりきった返事を聞き、日向は苦笑いしながら周りの風景をふと見渡した



「ところで、なんかこの街変じゃないですか?」


その街は、日向たちのいる建物の西側に広がっていた。


「ここではアルバイトはしたくないのだが…」

そう紫郎が言うようにその街は人気ひとけがなく、家を置き去りにして人間だけがどこかへ行ってしまったような寂しさがあった。


https://kakuyomu.jp/my/news/16817330647931813417



それぞれの家のマドは、劣化で割れているものもあるが、ほとんどが人間の手で破られたように激しく壊れており、

所々に赤黒いが飛び散って、引きったような跡があった。



日向は、なんとなくその街を見てはいけないような気がして、さっと目を逸らした


「そ、そういえば先輩…」



日向が違う話を始めたその時だった。





———パァンパァンッ




「ひゃッ!!!???」

「!!」


近くで爆発音のような音が聞こえた


音がしたその瞬間、先ほどの住宅街から人が出てくるのを日向は見逃さなかった。

その人は、自身の右腕を抱えながら、手前の家の壁に寄りかかり、ずるりと背中を引きずるようにしてもたれかかった。体つきからして、男性のようだ。



「日向!この音は銃声だ!身を隠した方がいい、撃たれるぞ!」


そう言いながら、かがんでいる紫郎が、日向の腕をぐいぐい引っ張っているのはわかっていたが、日向はその男性のことが気になって仕方がなかった。


「先輩!あそこに人が!!」


「なに⁉︎銃を持っているのか?」


「いえ!怪我しているみたいです!」



その時、『怪我をした男性』と『先ほどの銃声』という情報から、日向の頭の中では、彼は銃を持った誰かに追われていると瞬時に解釈した。


—あのままでは彼が死んでしまう!




助けに行こうと咄嗟に階段を降りると、



「日向!まさか助けに行くのか!?」

と驚いて目を見開いている紫郎に、腕を掴まれた。






一瞬の間に、日向の頭には2つの選択肢が浮かび上がった。


ここでじっとしているか、それとも怪我をしている見ず知らずの人間を助けるか…



日向は、いつも穏やかで、石橋を叩いて渡るタイプの慎重な人間だった。


だが、母が亡くなってから、時折ものすごく突拍子もない行動をすることがあった。



自分でもなにがその引き金になっているか、今までよくわかっていなかったが、


今この状況で一つ分かったのは、

目の前の人間が危険に晒されてる時、自分はどうしようもなく助けたいと思うことだった。



——自分も彼もどっちもから。








「いえ…行ってきます」


日向はそう答えると、紫郎を真っ直ぐ見た。



「これで行ってくるので、先輩はここで待っていてください!」


と、顔の前に学生鞄を持ってきて見せた後、日向は放たれたように階段を駆け降りた!




____________________________________



「あ…あぁ」


紫郎は、風のごとく階段を駆け降りていく日向を止めるわけでもなく、ただぼんやりと見つめた。











☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡


ご覧いただき、ありがとうございました!

途中のURLより、イラストが見れますので、良ければお楽しみください(^-^)


どんどん投稿していきますので、応援よろしくおねがいいたします!


カクヨムさん、素敵なサイトを作って運営していただき、ありがとうございます!

これから、よろしくおねがいします!


追伸(2022,11,21)

なんとなく名前変えました

風龍このみです⭐️これからよろしくお願いします!

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