願い
思い出すのは、あなたと行った向かいの公園。お祭りの会場で走りまわるあなた。小学校の入学式、キラキラした目で未来を見ているあなた。高校の卒業式、写真と撮るように頼まれるあなた。なんだか寂しそうに見える。あなたは誰にも写真を撮ってなんて言わない。だからわたしと記念写真。教室の外で待っているあなたの友達がいて、少しほっとするわたし。
面接の日の駐車場。小雨の中、「正面玄関ってどこ?」て言いながら、傘もささずに、スマホを片手にどこかに行ってしまった。こんな風にわたしの手の届かない世界であなたは生きていくんだろうな。うれしいと寂しいの狭間の中で、部屋に一人取り残されて、あなたの身を案じながら、希望は引き継がれて行くんだろうな。涙は傍らで流れて、願いはいつか叶うんだろうな。あなたの望みが叶うことはわたしの願い。依存し過ぎかな。
「頑張って卒業しなよ。」と言うと、「うーん。」と言う。「大丈夫?何かあったら言いなよ。」とわたしは言う。「大丈夫だって、うるさいから『うーん』って言ったんだよ。学校辞める気なんてないし。」あなたは言う。わたしはいつかいなくなる。それが心残りだ。だからわたしももう少し頑張ろうと思う。
あと少し、もう少し、そう思いながら、あっという間に時が過ぎ、けれども終わらない時が続き、何年の時が経ったのだろう。向かいの公園の木は枝が折れても春が来れば葉をつけて、桜の木も朽ち果てていきながら花をつけ。そんな姿に生きる活力なんて見い出せやしないけれども、「一緒にがんばろうね。」と声をかける。白樺や桜の木は余裕な表情で「がんばる必要なんてある?」って返事してくる。惰性で生きているわけではない。可能性ってなんの可能性?結局まだ幸せなんだよね。バラエティ番組を観ながら笑ってられるから。
描くこと、奏でること、それに意味を見出そうとする。願い。それを満たしたとしても本当は何も満たされないのかもしれない。誰かの評価を気にしているうちは。「もうどうでもいいや。」それは評価を期待しているから成立する。自己満足でいい。満たされればそれが世界。満たされたらそれで願いは叶ったことになる。あなた自身の評価だけを気にしていればいい。それが一番高いハードルだから、ずっとゴールには辿り着けないのだろうと思う。過程が大事だって言う人もいるけど、ゴールがあると思っている人の言葉。ゴールに辿り着いたと思っている人がいたら、周りの人から見たらどう見られていると思う?もっと美しいものを、もっと綺麗なものを、それはいつまでも終わりはないだろう。でもそれを求め続けていこう。
あなたたちにはもっと美しいなにかを描けるはずだ。わたしは諦めない。願いはあなたたちの笑顔が見られること。結局そうなんだ。
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