15.罪悪感



 「……はーすっきりした。」



 俺にボディーブローをくらわせたあと、カナは満足そうにベッドに腰をおろした。



 「……それは何よりで。」



 俺は苦笑いをしながらも、じんじんするお腹を必死にさすっていた。


 一瞬、お腹の中のものが全部出てしまいそうになったが、どうにか胃液を飲み込むことに成功したのだ。


 あぶない……あぶない……



 「って、割とアンタイケメンだったのね。」



 「……へへっ、まあな。」



 イケメンと言われるのはやっぱり嬉しい。


 前世ではそんなこと1度たりともなかった。キューピットに転生したことで、イケメンフェイスを貰ったことは本当に感謝している。



 「……まぁでも、よくある量産型のイケメンだからあんまり調子に乗らない方がいいわよ。」



 こいつ、本当に可愛げないな……



 そもそも、日本人で金髪、黒と黄色が混ざっている目なんて誰もいないだろう。少しくらい物珍しがってくれてもいいんじゃないか?



 「……ははっ、肝に銘じておくよ。」



 俺は眉をピクピクさせながら苦笑いで答えながら、体に巻いた白い布の懐から1冊のマニュアルを取り出して彼女に渡した。


 因みに、この白い布は本来天使が着ている「キトン」と呼ばれる衣服なのだが、キューピットも服を着る風習が芽生え始めたときに、天使のキトンを参考にしたとかなんとか。



 「……なにこれ、って、普通に神さまの本なのに日本語なんだ。」



 彼女はそんなことを言いながら、ページをペラペラ捲って中を確認している。



 「……今回の“戦い”における詳しいルール、相手の情報などが書かれているものだ。目を通しておけよ。」

 


 「“戦い”? 男を1人落とすだけじゃないの?」



 彼女はページを捲る手を止め、俺の方にジト目を向けた。そう言えば、その辺の詳しいことはまだ説明してなかったな。



 「 そう、戦いだ。今回、俺たち2人が落としにいくターゲットは“星海 連”。そして、そのターゲットを狙っているのは俺たちだけじゃない。」



 「……なるほど、そういうことね。」



 おや、やけに物分りがいいな? もう少し驚くかなとは思っていたが、そうでもないのか。

 


 「 ターゲットについては、本当に何も思い入れみたいなものはないのか? 」



 「……ない。顔は綺麗だと思うけど、恋愛感情的なものは少なくとも私の中にはない。」



 ……特に、本心を隠しているような感じはない。となると、本当に星海に対しての恋愛感情はないということか。


 セリスさん一体どういうことなんだよ……


 

 「 そうか……分かった。好きでもない男に対してアプローチさせるのは本当に申し訳…… 」



 「 グダグダうるさいなぁ。私がやるって言ったんだからアナタが責任を感じる必要はないでしょ? さっさと対戦相手について教えなさい。」



 謝ろうとした俺の言葉を遮った彼女の目には、やる気の炎が漲っていた。



 「……隆一ともう1回会える報酬と比較したら、好きでもない男を口説くくらいなんでもないわよ。」

 


 そう意気込む彼女を見ながら、俺の心に宿る罪悪感はより一層大きく膨れ上がった。



 

 





 展開が遅くて申し訳ありません……


なるべく早く次の展開に行けるように頑張ります……!


あと、読んでくれてありがとう!!


 

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