11.元カレの言葉






 「……ちょっと待て。お前、ドMなの……?」



 俺が恐る恐る聞くと、彼女は更に顔を赤くした。


 もう真っ赤っかだ……



 「……ち、違うの! そ、その……私の彼氏だった人が昔言ってくれた言葉に似てたから、なんか嬉しくなっちゃって……」



 “彼氏だった人”……?



 てことは、俺……? いや、俺以外の可能性もあるか……



 「……そ、その人がね、まだ付き合う前だったんだけど……私が、イライラしてキツい言葉をぶつけた時に、似たようなことを言ったんだよね。」



 好きだった子に対して、そんなこと言ったか?



 「そ、そうか……なら、奏は自分の愚かさも理解出来ない頭の悪い子だったんだね……って、そう言ったの!」


 

 その言葉を聞いた瞬間、記憶が蘇った。


 確かに、これは俺が言った言葉だ。



 なんで、こんなキツい言葉言ったのか理由までは覚えていないが、確かに言った記憶がある。



 「私……今までそんなこと言われたことなかったから、凄くビックリしたんだよな〜。」



 でしょうね。カナはずっと勉学面では学年トップ層を保持し続けていたから、そんなこと言われる筋合いなんてないもんな。



 「でもね、それ以来彼のことが気になりだしたんだよね〜。何か、絶対許さない!ってずっと彼のこと考えてたら、いつの間にか魅力的な部分も沢山見えてきて……」



 そ、そうだったのか……キツく言った言葉が偶然にも彼女の心を動かしたってことか。



 「……いつの間にかね、目が離せなくなってて、彼のことばっかり見ているようになっちゃったんだよね。」



 やべぇ、嬉しいな…… カナは俺のこと、結構好きでいてくれたのか。



 「……また、会いたいよ。隆一。」




  そう聞いた瞬間、俺の胸はチクリと傷んだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る