9.プチンッ






 俺は、正直かなり驚いていた。人の性格は1年足らずでここまで変わるものなのか……?



 当時のカナは……



 「い、言いたいことがあるなら早く言えばいいじゃんっ!」


 「……べ、別にアナタのことは嫌いじゃないって言うか……わりとその、信用してるわよ…」


 「て、丁寧な言葉遣いはだめ! 普通に話してくれればいいからっ!」



 こんな感じだったような気がする。



 それがたった1年でここまでツンツンした棘のある性格に変わるとは……



 つか、こいつ。恋してないって言わなかったか?



 「……まて、成瀬 奏。 恋をしていないとはどういうことだ……?」



 「……そのまんまの意味だけど? 私好きな人なんて今いないし。あと、フルネームで呼ばないでくんない? キショい。」



 「いやいやいや、待て待て待て待て。話が違うんですけど……? つか、キショいってなんだよ。もっと言い方あるだろ?」



 「は? 事実じゃん。面識のない初対面の相手に馴れ馴れしくフルネームで呼ばれるのとかキショい以外の何物でもないでしょ。」



 「いやだから、初対面じゃ……」


 あ、やべ……


 「……なに? 初対面じゃなって言いたいの?」



 「……いや、初対面だ。ごめん、」



 危ねぇ危ねぇ……うっかり俺の正体をバラすところだった。


 つか、この女。本当に当時の面影がねぇな。


 恋をすると人は変わるとよく言うが、カナは恋をしていないと言うしな……


 星海 連に恋心を抱く少女を集めたとセリスさんは言っていた。ならば、間違いなくカナも例外ではないはず。


 単なる照れ隠しなのか……?



 「……もうさ、いい加減にしてくれない? こっちはこれから朝ごはん食べて学校行かないといけないの。遊びに付き合ってる暇ないから、さっさと消えて。」



 プチンッ。



 「……おい。」



 「……なに? まだなんかあるの? いい加減に……」



 「 “お前って頭悪いんだな。” 」




    俺の堪忍袋の緒が切れた。


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