7.試験開始






 「ーー住所諸々確認しましたか?ー」



 俺たちが頷くと、セリスさんは腕時計を見た。



 「では、これより昇級試験を始めます。制限時間は1ヶ月。12月27日、23:59までです。皆さん、各自行動に移ってください。」


 

 開始の合図と共に、俺たちはパートナーの住む自宅を目指して直行する。制限時間は1ヶ月しかないので、なるべく早く契約を結び、早く行動を起こしたいのだ。



 キューピッドと言うと、手のひらサイズのようなイメージがあるかもしれないが、実際は普通の人間サイズくらいだ。


 キューピッドは、20年近く生きると外見の老化がとても緩やかになる。俺の場合は、神界で過ごしている時間が約15年なので、中学3年生くらいの容姿だ。


 ここでありがたいのが、俺の容姿が桜井 隆一と異なること。俺は転生した時に、前世の記憶だけを受け継いだので、容姿はちょっぴりイケメンなのだ。



 まぁ、俺の容姿が当時15歳の隆一なら、カナに即効バレるからな……



 とはいえ、ちょっぴりイケメンなのは事実だが、神界の顔面偏差値は異常に高いので、これでも凡になってしまうのが現実。



 やはり、現実は甘くない。

 



 そんなことを色々考えてるうちに、彼女の家の近くまで俺は飛んできた。羽は使用出来るので、移動は非常に楽だ。



 「……あー、なつかしいなぁ。」



 思わずそんなことを呟いた。彼女の通う高等学校、当時通っていた中学校、デートしたことのある喫茶店、色々なものが懐かしく思えて仕方ない。



 街の景色は、当時から1年しか経っていないので、特に変化はないのだが、俺からしてみれば15年ぶりだからな。

 



 「……ここだな。」



 カナの家の前に俺は降り立つ。


 彼女の家は一軒家で、50坪くらいはありそうな高級住宅だ。


 俺が彼氏だったとき、何度か彼女の家に通してもらったことがあるが、ドキドキしっぱなしだったので何の記憶も残っていない。



 「……よし、入るか。」



 人間が生きている次元とは異なり、キューピッドは4次元に存在しているので、基本的に人の理には縛られない。


 壁などはスルッとすり抜けられるし、許可なく人が触れることも認識することも出来ない。



 俺は、玄関から家に入った。もう、0時を回っているので、家中の電気は消灯している。



 まぁ、キューピッドの目は暗闇でもへっちゃらなんだけどね……



 



 「あれ……電気ついてる?」



 家を探索していると、光が漏れている部屋を2階で見つけた。



 こんな時間でもまだ起きてる人がいるのか…… そんなことを思いながらその部屋に近づくと、何やら“甘い”声が聞こえてきた。





 「……んやっ んっ んぁっ///」



   あ……



 「……はぁ…はぁ……はぁぁ//」




 カナのお○にー……彼氏のときも、特にエッチな展開になることはなかった為、こんなカナを見ることは1度もなかった。



 身体をくねらせながら、くちゅくちゅ音と共に右手で下腹部をこねくり回している。


 甘い声と匂いが部屋の外にまで溢れていて、俺の脳がおかしくなりそうである。


 ちょ、ちょっと退散……



 最後まで見ていたかったのが本音だが、流石に罪悪感に駆られて、俺はその場を後にした。



 今夜は声をかけられそうにないな…



 俺はそんなことを思い、家から少し離れたところで仮眠をとることにした。



 まぁ、カナの“アレ”が脳に焼き付いていたため、結局眠れなかった。



 

 



 


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