第9話 憶測、こじつけ

 まぁ結局、このトンネルでの心霊現象なんて、所詮は噂話なのだ。

 ここで起こった事故や事件など聞いたことがない。

 ただその場所の醸し出す雰囲気が、たまたま肝試しに向いていて、誰かがふざけて流した噂話。それが、この場所の正体だ。


 ではあの女は誰なのか?

 あの最後に残ったボロ切れは何なのか?

 残念ながら、謎は残ったままであるが。


 え?それじゃあスッキリしない?

 ……はぁ~仕方がないな、じゃあこういうのはどうだ。


 あの女、おそらく河上と知り合いではない。

 もし知り合いだったら、河上ではなく僕や青年じゃなく、河上にだけ執着しそうなもんだからな。


 では誰なのか?あの心霊スポットで死んだ人などいない筈だ。

 その答えはおそらく、あのボロ切れだろう。

 最後に残ったあのボロ切れ、よく見たら女が着ていた服と質感が似ていた。

 女はあのトンネルではない何処かで亡くなっており、そのボロ切れがどういうわけかあのトンネルに流れ着いたのではないか。


 それでだ、ではあの女は何がしたかったのか、だが。

 あの女はとにかく自分に構ってほしかったんじゃないか。

 よく道連れにしようとする幽霊の話を聞くが、あの女は一度だって殺そうとはしていなかった。

 僕を掴んだあの程度の力があれば、首を絞めるくらいできた筈だ。

 つまり、構ってほしい、もっといえば寂しかったんじゃないか?と。


 ――不気味なだけの場所に幽霊のようなものが見えたから、幽霊がいる。そこにたまたま流れた遺品の一部。条件が合わさって幽霊のようなものがみえてしまった、とかな。


 ま、幽霊なんて所詮勘違いだし、適当にこじつけるなら、このあたりで落とすのが良いだろう。 


 え?幽霊にビックリして気絶してた?脚掴まれてただろ?

 ……あのな、僕は今、前提として幽霊がいるという事にしただけだ。

 幽霊なんているわけ無いだろ!何度も言うがあんなもの、ただのモヤだ!


































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