第7話 気がついたら
「おい、お前ら!人のトラックになにしてやがる!」
この泥棒、警察に突き出してやる!
小説家の久崎と青年が乗ったトラックの運転手―河上は、声を荒げながら、トラックの前で仁王立ちしていた。
先程、気がついたら道路の真ん中にぽつんと立っていた。
あたりを見回すと、心霊スポットとして有名なトンネルがすぐそこに見える。
わけもわからないまま、自分の記憶を思い出そうとしているところを、トンネルの中を自分のトラックが走り出てきた。
「あ、俺のトラック!あの運転席のヤツは……!」
瞬間、走行中に窓から男が侵入、頭をぶん殴られた記憶が蘇る。ズキンと、その殴られた箇所が痛んだ。
―間違いない、あの例の男だ!
彼は怒りに任せ、轢かれるのも構わず道路に飛び出した。
トラックはキキィー!と大きな音をたてて止まる。しかし間一髪であったので、河上は流石に驚いて、後ろに倒れてしまった。
立ち上がりながら、指を指して怒号を飛ばす。
「おい、お前ら!人のトラックになにしてやがる!」
直ぐにトラックから自分を殴ったあの男が、竹刀袋を手に持って出てきた。
「おい、なんだよそれ!やる気か、お前!」
竹刀袋を持って降りてきた男の襟元をつかむも、どうも様子がおかしい。彼は抵抗することなく、寧ろ動揺した様子でトラックと河上を交互に見ていた。
河上もつられてトラックの中を見る。
助手席が空いているのに中央の席に腰を掛ける、細身の男がいた。彼は軽く俯いて、どこかぐったりとした様子だ。
隣にいる男はしばらくトラックに乗っている細身の男を見ていたが、やがてハッとした表情で河上を振りほどき、勢いよくトラックへ向かっていった。
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