第6話 帰り道

 来た道を戻る、といっても5分くらいの道のりだ。

 一時はどうなることかと思ったが、僕たちはあっさりとトラックへ戻ることができた。

 運転はトラックの持ち主に任せようとしたが、どうやら手を挫いたらしく、引き続き不審者の彼が運転手をすることになった。

 トラックの持ち主は助手席に、僕は中央に座る。……とても居心地が悪いが、まぁ、いいだろう。

 エンジンは先程の不調が嘘かのように問題なくかかり、トラックはトンネルに入る。


「いやぁ、にしても。ご迷惑をおかけしてすみません」


 暗がりの中、トラックの持ち主は、この不審者にやられた所業を忘れたのか、頭を搔きながら笑っていた。物腰も柔らかくなっている。

 どう考えても謝るのはこちらの方だ。妙な女や心霊スポットに寄り道をしたのは些か驚いたが。

「いえ、こちらこそすみません、色々と。そういえば、体調は大丈夫ですか」

「ええ、もうすっかり」

「なら良かった。いやしかし、あのトンネル。雰囲気ありましたね。妙に音が響いて気になって……」


 ――僕は緊張感から解き放たれ、つい、いつもの様に口が動いてしまう。

 先ほど面倒だからと避けた話題に首を突っ込んでしまった。


 音が響いて気になった


 あのとき、2人分の布がこすれる音すらよく聞こえたのに。


 そういえばこの人の音は聞こえただろうか、と。


 途端、車がキキィー!と甲高い音を上げながら止まった。不審者がブレーキを踏んだようだ。

 僕は反動で上体が前に出るも、シートベルトをしておいたので無事だ。突然何事かと、運転席に座る男を見る。


 彼は少し慌てた様子で、トラックから降りた。


 トラックの目の前に、誰か倒れている。怪我はないのか、その人は直ぐに立ち上がり、不審者の彼と喋っていた。


 その彼は、だった。








 

 













『あーあ』


















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