第10話 コンダクター

 二〇一七年。彼女の話は、その頃のものであった。当時、俺も藤乃も中学二年生。中学生活に怖気づくことはなくなり、高校受験に怯えることもないゆえに、中学二年生は気が弛む時期と言うが、強ちそれは間違いではないのだろう。城北中学校の同級生らも、皆ふんわりとした空気に包まれており、俺も例にもれず、何も考えずに淡々と毎日を送っていた。

 藤乃は「合唱コンクール」という言葉を口にした。城北中学校で全学年合同で行う行事の一つに、毎年秋に各クラス自由曲と課題曲の二つの合唱曲を歌い、その点を競い合うというものがあった。

 また、藤乃の話には彼女本人に街にもう一人、重要な登場人物がいた。それが石狩明里いしかりあかり。俺たちの同級生であり、俺の二年の時のクラスメイト。そしてなにより、当時藤乃が対峙していた魔法少女効果の発現者である。

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