1章 『深読みする孤独者』と『能天気ポンコツ女神』

第8話

08話


 うーむ……。


 人間ってのは凄いな。


 何にでも慣れて、驚かなくなる。


 環境の変化に強いのが、人間の強さかも知れないな。


 うん、何を言ってるのか意味不明かも知れないが、俺も意味不明なんだ。


 なんせ俺は真っ暗闇の中を落下中だ。


 ボタンを押せば光って見えるハズの腕時計が見えないから正確な時間が分からないんだけど、体感的には穴に落ちてから既に半日は経過していると思う。


 な?意味不明だろ?


 穴に落ちた当初は、そりゃ慌てたさ。


 死を覚悟して、死んだ両親や世話になった人……米山部長や美咲先輩を想って、色々と祈ったさ。


 もちろん神様や仏様にも祈ったさ。


 たぶん体感的に10分ぐらいかな?


 もっとかも知れないが、それぐらい経過してから異変に気が付いた。


 落ちてるんだけど、何処までも落ちて行く。


 有り得ないだろ?


 もう頭の中は『?』だらけになったさ。


 人間、混乱すると本当に頭の中は『?』だらけになる。


 そして体感的に1時間ぐらいが経った頃、落ちてることに慣れてしまったよ。


 非日常なんだけど、日常みたいな感覚になる。


 酸素というか空気とか、どうなってんの?


 俺は落ちていると思っているんだが真っ暗闇の中を落ちていると、落ちてるのか上昇してるのか分からなくなる。


 いや、垂直方向だけじゃない、水平方向に直進してるのかも知れない。


 一方向に移動してるのは分かるんだ。


 Gがかかってるからさ。


 くるっと体を後ろに向ければ、背後に引っ張られる感覚ね。


 まぁ、落ちている間は暇だから色々と考えたさ。


 地球の内部は空洞で地底人がいるのか?とか。


 このままだと地球の反対側、日本だと南米辺りに出るのか?とか。


 俺は実は既に死んでいるんじゃないのか?とか。


 色々と考えたさ。


 色々と考えたけど、結局は何一つ分からない。


 分かるとすれば『超常現象が起きている』ぐらいなもんだ。


 ……俺はこのまま死ぬまで落ち続けるのだろうか?


 これが俺の最後か?


 ははは、乾いた笑いしか出ねーや。


 もう神様でも仏様でも邪神様でも異世界の神様でも何でも良いから、誰か俺を助けてくれないか?


 ここから出してくれよ。


 何で俺がこんな目に遭わなきゃならんのよ……トホホ。


 『……………#&~……』


 ん?


 んんん?


 何か音が聞こえた様な……?


 それとも暗闇の中で幻聴が聞こえるほど、既に頭が狂ったのか?


 『……………#&~……』


 あ、やっぱり何か音が聞こえたぞ!


 あっちの方向から音が聞こえる。


 って、うお!?ビックリした!?


 今までの直進方向から、急に音が聞こえる方向にグングンと引き寄せられ始めたぞ!?


 音が聞こえる方向に向かっているってことは、やっと終点か?


 俺はどうなるんだ?


 やっぱ死ぬのか?


 お?


 何か凄い遠くの方で光が見えて来たぞ。


 あの光に向かって直進してるのか?

 

 光に近づいているからなのか、少しづつ光が大きくなっている。


 俺が光に近づいてるのか?


 それとも光が俺に近づいてるのか?


 それともお互い引き寄せ合ってるのか?


 少しづつ少しづつ光が大きくなっていく。


 あれ?


 ドンドン光が大きくなってきた。


 って、うおぉー!!


 光のおかげで、愛車のハ○レーダビッドソンとベ○スキャンプ16X+物置が見えた!!


 やっぱり俺と一緒に落ちてたんだな!!


 真っ暗闇だから分かんなかったよ!!


 ん?


 土や砕石や鉄板まで一緒に落ちてたのかよ!?


 お前らはお呼びじゃねーよ!!


 てか、ドンドン光が大きくなってもう光の端っこすら見えないし、何よりクソ眩しい。


 マジでクソ眩しいから、俺は両手で目を覆い隠し、目を閉じて成り行きに任せる。


 どーか、死にませんように……。


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