第7話

07話


 「ふぅー、遅ぇな……」


 玄関に鍵をかけ、高級タバコを吸いながら隣の簡易駐車場で牽引専門の業者が来るのを待っている。


 俺は愛車のハーレ○ダビッドソンで港まで向かい、ベ○スキャンプ16Xと自走型物置は牽引業者が港まで引っ張って行く予定だ。


 明日、港からアフリカ行きの貨物船に乗船するが、前日から港に乗り込む。


 当日に遅刻とか洒落にならないしな。


 家のスペアキーを既に米山部長に渡しており、月に1度は清掃業者が掃除する様に手配している。


 さすがに10年間も人の手が入らないなら、色々と問題が出てくるだろうし。


 長年住んだ家を出ることに少し寂しい気持ちにもなるが、新たな門出には過去の未練を断ち切り、未来の成功だけを見ることも必要だ。


 愛車のハーレ○ダビッドソンと手塩にかけたベ○スキャンプ16Xと共に、俺はアフリカの大地で風になる。


 それにしても牽引業者が来るの遅いな……。


 いや、分かっている。


 俺が外に出るのが早かっただけだ。


 牽引業者の予定到着時間よりも1時間も早くに外に出ている俺が馬鹿なだけだ。


 でも仕方がないだろ?


 遠足前の様にワクワク感が止まらないから、外に出て無いと落ち着かないんだ。


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 お?ラ○ン電話が鳴ってるな。


 アフリカ出発前のこんな時間にかけてくるとか、誰からだろ……?


 俺はハ○レーに取り付けたスマホ・ホルダーまで向かいスマホの画面を覗くと……ゲゲッ!!美咲先輩からじゃん!?


 おいおい、乗船までの俺の予定時間は伝えてただろ?


 いったい何の用事なんだよ……。


 ん?まさか……。


 アフリカに持って行く荷物の追加か!?


 いやいやいや。さすがにこの時間から追加の荷物とか無理ですわ。


 何か嫌な予感がするし……よし!ラ○ン電話に気付かなかったことにしとこう!!


 俺は何も見ていない!!


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 『ピロピロリーン♪ピロピロリーン♪』


 いやいやいや。美咲先輩、諦めましょうよ。


 何でこんなに連続で鬼電してくんのよ?


 ヤンデレかよ?怖っ!?


 それにラ○ン電話をスルーしてたから、今さら素知らぬ顔で電話を取るのも気まずいし……。


 ヤンデレ気味の美咲先輩からの電話をどうしようかな……なんてクソどうでも良いことで悩んでいたら、やっと美咲先輩からの鬼電が止まり、スマホから『ピコン!』とメール音が鳴った。


 あー、たぶん美咲先輩からのメールかな?


 今メールを見ると既読が付くの怖いし、港に着いてから見るか。


 あ、そういやスマホの待機画面からならメールの上文なら見えるし、それ読んで判断するか……。


 と思っていたら、足下が少しグラ付いた。


 んん?


 地震かな?


 あれ?


 揺れが大きくなって……。


 って、ヤバい!!大地震かよっ!!


 ズドンッ!!!!!と地面が大きく揺れた直後に『パキパキパキ』と音がし始めた。


 スゲェ揺れだし!!


 ってか、このパキパキ音、何の音だよ!?


 って、は???


 地面というか鉄板が割れてる……???


 いや鉄板が地面に沈んでる???


 は???


 地割れ???


 陥没???


 何でもよいが穴が急速拡がってる様な……???


 って、ちょっっ!!まっっ!!


 俺のベ○スキャンプ16Xと物置が穴に飲み込まっ!!


 って、ちょっっ!!まっっ!!


 俺のハ○レーダビッドソンも穴に飲み込まれ始めっ!!


 反射的に愛車のハ○レーダビッドソンに駆け寄り手を伸ばしたら、俺も一緒に急激に拡がる穴に飲み込まれた。


 あ、やっちまった。


 死んだな、俺……。


 穴に飲み込まれる瞬間に見えたスマホの待機画面には『タロウ、逃げて!!凄く嫌な感じが……』と美咲先輩からのメッセージが届いていた。


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