散歩の七百三十八話 慰労会

 お風呂から出て着替え終えて、パーティー会場に向かった。

 スーたちも既に会場にいて、続々とパーティーに参加する人たちもやってきた。

 商店街の人たちが堂々とやってきて、初心者とはいえ冒険者の方がおどおどとしているのがとても面白い。

 そして、子どもたちは専用席に座ってスタンバイしていた。

 あっ、そうだ。

 スーに言っておかないと。


「スー、お酒は駄目だよ」

「分かっていますよ、子どもたちの前ですから飲みませんよ」


 うーん、なんというかちょっと不安はある。

 いざとなったら、アオに催眠魔法をかけてもらおう。

 そして、辺境伯家の面々もやってきました。

 料理が運ばれ始め、飲み物も配られている。

 アヤとアイも、侍従に混じって配膳を手伝っていた。

 こうして準備を終えたところで、辺境伯様がグラスを手にした。


「今年も無事に花見祭りを終えることができたのも、ここにいる皆のお陰だ。途中人神教による妨害もあったが、概ねうまく行っただろう。来年も、滞りなく行えることを願う」


 人神教は、初日から色々とやらかしたから本当に迷惑だった。

 早いうちに壊滅して欲しいと思うよ。

 誰もがそう願っているはずだ。


「それでは、今年の花見祭りの成功を祝い乾杯とする。乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 乾杯の音頭でパーティーが始まったが、最初のうちに挨拶を済ませておかないと。

 僕は、スーとともに各テーブルに行った。


「辺境伯様、お疲れ様でした」

「いやいや、シュンたちの方が苦労をかけただろう。料理はともかくとして、直接襲撃するとは思わなかったぞ」


 あの、辺境伯様、屋台でひたすら料理を作っていたのは普通ってことですか?

 流石に泣きたくなる気持ちです。

 因みに、ゴンゾーと執事とは全く接点がなく、本当にたまたま僕たちに不満を持っているという理由で選ばれたそうです。

 話が長くなりそうなので、次に実行委員長のところに向かった。


「げっ、スーが来た! 酒を隠せ」


 すると、実行委員長たちのいるテーブルの酒が一斉に端に寄せられた。

 昨年の惨劇を、身をもって体験していたからなあ。

 スーも、苦笑いするしかありません。


「とにかく、無事に終わったのが何よりだ。来年もいて欲しいが、頼りっきりになるのは良くない。幸いにして、目玉商品ができたからな」


 まんまる焼きが大好評だったので、来年もメニューに残すという。

 辺境伯家で保護されている子どもたちも何人か作れるようになったし、僕たちがいなくても全く問題ありません。

 子どもたちは、ホルンが着ていた特製エプロンが欲しいみたいですね。

 こうして、他の席にも行ったけど、軒並みお酒を遠ざけていました。

 昨年のトラウマが凄いことになっているんだ。

 お陰で、子どもたちとともに平和なパーティーを過ごすことができました。

 スーは、そこら中で昨年のことをネタにされてちょっと涙目だったけどね。

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