散歩の七百二十九話 今度は別の手口で妨害してきた

 翌日も、僕たちは花見祭りの会場のお手伝いをします。

 会場に着くと、兵の巡回が強化されていた。

 昨日のことがあったから、追加で巡回要員の冒険者も増やすそうです。


「で、なんで私も時々巡回にいかないといけないの?」

「そりゃ、強者として新人冒険者の護衛をしないとならないだろうが」

「だから、私はか弱い商会の看板娘なの!」


 なんというか、またもや実行委員長とサマンサさんの親子のじゃれ合いが始まっていた。

 昨日サマンサさんが獣人の大男を一発でノックアウトした件は、誰もが知っています。

 なので、新人冒険者はサマンサを凄い人物だと認定していますよ。

 因みに、その際保護したスライムは相変わらずサマンサさんの頭の上に乗っていました。

 赤いからリンゴちゃんと名付けたらしいですが、暫くはサマンサにくっついていそうですね。

 その間に、僕たちは出店の準備を進めます。

 今日も、焼きそばパンの試作品を作ってみんなに食べてもらってから販売開始します。


「段々とお花が咲いてきたね!」

「あと数日もすれば満開になるだろうね」

「いい匂いだし、楽しみだな!」


 シロも、桜に似た花が段々と満開になってきてとても嬉しそうにしていた。

 道行く人も、思い思いに花を楽しんでいる。

 一見すると長閑だけど、花より団子って人も多いので屋台にはたくさんの人が並んでいた。

 アルコール販売は禁止なので、ちびっ子もいるから酔っ払いがいなくてちょうどいい。


「「「いらっしゃーい!」」」


 フランたちに混じって、屋敷にいる子どもも元気よく声を上げていました。

 買い物客にも頑張っているねと褒められているのもあって、ニコニコが止まりません。

 こうして午前中は何事もなく過ぎていったのだけど、昼食時に問題が起きてしまいました。


「おい! このまんまる焼きは辛すぎるぞ! わざと辛くしたな!」

「「えーっと……」」


 なんと、ホルンの作ったまんまる焼きにいちゃもんをつける人族が現れました。

 確かに手にしているのはちょっと辛めのものだけど、別に獣人だけでなくても人族でも余裕な辛さだけど。

 ホルンでもちょっと辛い程度です。

 激怒する人族に流石にジョディーさんも困惑していたけど、僕とアオはサッと手を上げました。

 すると、小屋の中から屈強な獣人を率いて実行委員長が現れました。


「ああ!? この程度のまんまる焼きが辛いだと!?」

「いや、その……」


 うん、まるでチンピラみたいな実行委員長に、粋がっていた人族はあっという間にたじろいてしまいました。

 すると、実行委員長は手にしていた瓶に入っていた唐辛子を人族が持っていたまんまる焼きに山ほどふりかけ、人族に無理矢理食べさせました。


「ほがーーー! あーーー、あーーー!」

「辛いっていうのは、こういうんだよ。これでも、獣人は平気だぞ。さて、小屋の中でゆっくりとオハナシするか」


 なんというか、人族は涙とよだれをたれ流して叫びながら連行されていきました。

 というのも、連行されたのは人神教の構成員でわざとホルンのまんまる焼きにいちゃもんをつけたのだ。

 既にいちゃもんをつけた段階で、多くの実行委員がスタンバイしていたけどね。

 ホルンとジョディーさんも直ぐに気を取り直して、まんまる焼きを作っていました。

 しかし、人神教は色々な手口で花見祭りを妨害してくるなあ。

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