散歩の七百九話 花見祭りの会場へ

「「「いってきまーす」」」

「気をつけてね」


 歓迎会も無事に終わり、翌朝僕はシロたちを連れて花見祭りの会場に向かいました。

 スーは随行員とともに辺境伯様と打ち合わせで、アヤとアイも屋敷に残っています。


「本当に人がいっぱいだね。ゴミゴミしているよ!」

「はぐれないように、手を繋ごうね」

「「「はーい」」」


 観光客もたくさんいるので、僕はホルンとヴィヴィと、シロはフラン、ジョディーさんはノア君と手を繋いでいます。

 こうして、町の景色を眺めながら花見会場となる丘に向かいました。


「あれー? まだお花が咲いていないよ」

「もう少ししたら、一気に花が咲くんだよ。とっても綺麗な光景なんだよ」


 ヴィヴィだけでなく、殆どの子どもたちが葉もないただの枝を見て不思議に思っていました。

 前世の桜も、最初は葉も何もないもんね。

 だから、シロは張り切って他の子どもたちに説明していました。

 そして、無事に小屋の前に到着です。


「「「おはよーございます!」」」

「おや、今年も小さい子が来たわね」


 小屋に入ると、実行委員長の奥さんが僕たちを出迎えてくれました。

 奥さんは、相変わらずハキハキとした感じですね。


「今ね、旦那は仕入れに行っているのよ。なので、もう少ししたら娘が来るから案内させるわね」

「確かに、町にはたくさんの観光客が来ていましたね」

「そうなのよ。花見祭りもそうなんだけど、美味しいお店が出るって噂になっているのよ」 


 おおう、まさかこの人出の一端に僕が絡んでいたとは。

 とはいえ、普通のものしか作らないですよ。

 ということで、最初は倉庫から機材とかを運び出します。

 どう組み立てるかは、サマンササンが来てからにしよう。

 すると、実行委員長の奥さんが僕にとある事を頼んできた。


「シュン、悪いけど簡単でいいから朝食を作ってくれるかい? 手伝いの冒険者が来ているんだけど、馬鹿なことに朝食を抜いてきたんだよ」


 小屋の中でペコペコと頭を下げている三人組がいるけど、装備とかを見ると多分新人冒険者だな。

 冒険者あるあるだけど、流石に朝食抜きだと力仕事ができないだろう。

 なので、僕は簡単に作れるお肉サンドにした。

 腹ペコな冒険者の人数分用意してっと。


「おっ、いい匂いだな。俺たちにも作ってくれ」

「やはり、シュンの料理は美味いな」


 できた分を、他の職人さんが食べてしまった。

 なので、量を多めに作っておいた。

 どうせ、おやつ代わりでみんな食べちゃうだろうなあ、


「シロはCランク冒険者なんだよ!」

「うおっ、本当だ! しかもこの称号の数はなんだ?」

「俺ら、昨日冒険者登録したばっかりなんですよ……」


 一方、シロたちは初心者冒険者とお肉サンドを食べながら仲良く話をしていた。

 仲良くするのはいいのだけど、シロたちはもりもりと朝食を食べたんじゃなかったっけ?

 そんな事を思いながら、僕は更にお肉サンドのお代わりを作っていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る