散歩の七百十話 偉い人たちの到着

 暫く朝食を作っていると、サマンサさんが息を切らせながらこちらに走ってきた。

 一人で来たということは、実行委員長はまだ仕入れの最中みたいですね。


「はあはあはあ、し、シュンさん、シロちゃんたちもおはよう……」

「「「おはよー」」」


 ゼエゼエと荒い息を整えながら、サマンサさんは僕たちに挨拶をしています。

 コップに水を入れて渡したら、カッコよく腰に手を当てながら一気飲みしていた。

 コマーシャルに出れるくらいだなあ。


「はあ、ようやくひと息つきました。スーさんはどうしましたか?」

「辺境伯様の屋敷で、色々と打ち合わせをしています。とはいえ、東の辺境伯領に滞在する間にやることですけど」

「ですよね、王女様は忙しいよね」


 サマンサさんは王都で会った際も僕たちの立場を知っているし、それでいて態度を変えていなかった。

 ジョディーさんとノア君もサマンサさんと挨拶をしていたら、新人冒険者が怪訝そうな表情でサマンサさんに質問していた。


「あ、あの、いま王女様って言葉が聞こえたような……」

「ああ、正月に発表があったけど、スーザン王女殿下が帝国に行くために東の辺境伯領に来ているの。とても良い人よ。ちょうど来たみたいね」


 思わず固まった新人冒険者の視線の先には、とても豪華な馬車があった。

 そして、そのまま小屋の前に着くと、馬車から元気の良い子どもたちが降りてきた。


「「「おはよーございまーす!」」」

「はい、おはよう。今年もやってきたのね」

「「「そーだよ」」」


 最初に降りてきたのは、辺境伯家で保護されている子どもたちです。

 そして、先代夫人様とスーも馬車から降りてきました。

 スーは、まだ王女のドレスを着ていますね。


「先代夫人様、わざわざお越し頂きありがとうございます。スーさんも、お久しぶりです」

「ふふ、子どもたちがどうしても見に行きたいと言っていましたから。様子を見たら、直ぐに帰りますわよ」

「サマンサさん、お久しぶりです。私も直ぐに帰りますので、皆さまにご挨拶に来ました」


 サマンサさんは先代夫人様とも顔見知りだから、和やかに話をしていますね。

 しかし、二人とも気品のある服装なので、新人冒険者は圧倒されています。

 すると、小屋の中から実行委員長の奥さんも顔を見せてきました。


「これはこれは先代夫人様、ようこそいらっしゃいました」

「こちらこそ、今年も子どもたちがお世話になりますわ」

「ふふ、子ども屋台は好評だったので、私たちもとても楽しみにしておりますわ」


 なんというか、井戸端会議が始まってしまった。

 どの世界でも、女性はお喋りが大好きですね。

 ニコニコと談笑が止まらなくなってしまったので、子どもたちもどうしようかと迷ってしまっています。

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