散歩の六百六十八話 冒険者ギルドの入り口に捨てられていた子

 一月も終わりに近づき、寒さも厳しくなってきました。

 僕かスーの部屋には、シロ達の誰かが必ず入ってきていました。

 まるで、猫が暖を求めてくっついているみたいです。


「むにゃむにゃ、パパー」

「はいはい」

「おかしちょーだい」

「なんでやねん」


 今朝の僕のベッドには、ヴィヴィとフランが入っていた。

 寝息で会話するなんて器用な事をしているなど思いながら、僕は二人に布団をかけなおしてベッドから降りた。

 二人は仲良くくっつきながら、また夢の中に入っていった。


「もぐもぐもぐ、今日は何かあるんだっけ?」

「スーが午後から王城に行くから、午前中薬草採取をするよ」

「「「「わーい」」」」


 シロたちは薬草採取が大好きだから、外は寒いのに大喜びです。

 急いで朝食を食べて、外に出る準備をしていました。

 僕とスーも、思わず苦笑しながら朝食を食べていた。

 そして、準備をして馬車に乗って冒険者ギルドに向かった時でした。


「おぎゃー、おぎゃー」


 何と、冒険者ギルドの入り口にタオルに包まれた獣人の赤ちゃんが置かれていたのです。

 周りにいた冒険者も、予想外の事に様子を伺っていただけでした。

 このままでは赤ちゃんが凍えてしまうので、スーが赤ちゃんを抱っこして受付に向かいました。


「えっと、私たちが出勤した時には赤ちゃんはおりませんでした」

「とりあえず、個室に案内いたします」


 受付のお姉さんも困惑していたけど、赤ちゃんの様子を確認しないと。

 個室を借りて、タオルを脱がせます。


「あっ、お兄ちゃんと同じのがついている」

「「「ちっちゃーい」」」


 赤ちゃんは毛がグレーの犬獣人か狼獣人の男の子で、タオルの下は素っ裸だった。

 幸いにしてうちにはあの侍従の赤ちゃんのガイちゃんがいるので、常に予備のオムツと服をアイテムボックスにしまっていた。

 更にヤギの乳と哺乳瓶もどきもあるので、さっそく温めて飲ませます。


「ちゅちゅちゅちゅ」

「沢山飲んでいるね」

「「「のんでるー」」」

「よっぽどお腹が空いていたのね」


 生活魔法である程度体を綺麗にし、ヤギの乳を飲ませてあげます。

 ガイちゃんに哺乳瓶で飲ませた事があるので、シロは上手に赤ちゃんに飲ませてあげていた。

 そして、鑑定するとビックリすることが判明しました。


「孤児で、両親も不明。しかも生まれたてだよ」

「うーん、あまり状況は良くないですね」


 生まれたばかりで母親が亡くなったのかどうか分からないけど、ガイちゃんの時とは明らかに状況が違っていた。

 アオも触手を組んでどうしようか悩んでいた時、部屋に入ってきた人が。

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