散歩の六百六十三話 すっかり有名人?

 新年も十日もすれば、普段の日常に戻ります。

 その間、スラム街にある教会で炊き出しをしたり、テルマさんとケーシーさんやリアーナさんが屋敷に遊びに来たりしていました。

 スーも、公務で面会とか慰問に行ったりしていた中、今日は久々に冒険者として活動します。

 やってきたのは王都冒険者ギルドの講習を行う部屋で、今日は新人冒険者向けの講習を行います。


「あ、あの、もしかしてスーザン王女様ではないですか?」

「ええ、そうですわ。でも、今日は冒険者のスーとして、皆さんの講師としてやってきました」

「あ、あわわ。ほ、他にも王宮にいた方が……」


 あらら、部屋で事前準備をしていたら、スーだけでなく僕とシロの姿を見てビックリしている新人冒険者の姿があった。

 しかも、王宮前広間で大立ち回りしていたフラン達にも声をかける人がいたけど、何だか随分と有名になってしまったものです。

 そんな中、僕たちに敵意を向けてくる者もいました。


「けっ、なんだなんだ! 冒険者は実力でどうにかしねーと」

「王女様がなんだってんだ!」


 スーが王女だと知っていて、それでも態度を変えてこない人たちです。

 昔だったら邪険に思うけど、今は元気だと思ってしまいます。

 スーも、シロたちも全然気にしていません。

 そして、地方から来たばっかりで何が何だか分からない新人冒険者もいます。

 とはいえ、教える内容はどんな人でも変わりないし、普通に座学を進めていきました。

 そして、多くの冒険者お待ちかねの実技講習に入ります。


「はい、時間ですね。筋は悪くないので、これからも剣の訓練を続けましょう」

「はあはあ、何で余裕なんだよ」

「ふうふう、あの王女様、あんなに強いのかよ……」


 スーが相手をした元気の良い新人冒険者は、地面に転がって息を整えるのがやっとでした。

 確かに新人にしてはそこそこの剣の腕だったし、大口を叩くだけのことはあった。

 もっとも、本人たちはこんなはずではなかったって表情だったけど。


「えっとね、こっちの大きい剣の方が良いと思うな」

「えっ、わあ、確かに振りやすい!」


 シロたちは、アオと一緒に武器選びを手伝っています。

 この辺もいつも通りだけど、たまにとんでもない武器をチョイスする時があるんだよなあ。

 今も、元は短剣を振っていた女性に、背負うタイプの剣を勧めていた。

 勧められた本人が納得しているのが、ある意味凄いけど。


「リーダーは大変だぞ。こういう人たちをまとめないといけないのだから」

「よく分かります、凄いです!」

「講師は凄いですね!」


 そして、僕はというと何故か男どもに囲まれて凄く褒められていた。

 人をまとめるのって、本当に大変なんですよ。

 初心者向けの講習自体はこれで終わりなんだけど、実は別の講習をこの後行う事になりました。

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