散歩の六百二十七話 次回はもっと人員を増やそう

「はい、どうぞ」

「たくさんありますよ」


 シロだけでなく、教会のシスターさんも炊き出しのスープやパンを配布しています。

 長蛇の列が続いていて、僕とアオも忙しく追加の料理を作っています。

 長蛇の列は、治療班の前にも続いていました。


「これで、良くなりました」

「次の方、どうぞ」


 スーを中心にして治療を行っているのだけど、人の列が途切れません。

 幸いにして重症者はおらず、ホルンとヴィヴィでも十分に対応できます。

 何故ここまで長蛇の列になっているかというと、前回の無料炊き出しと治療が評判で今日スラム街の教会で行われると知って大勢の人が押し寄せたからだそうです。

 何より、王女様のスーが自ら治療を行っているのもポイントが高いそうです。

 もちろん、兵やシスター中心として住民の要望を聞いています。

 しかし、必ずしも良い住民だけが集まっている訳ではありません。


「「ブルル」」

「おっ、次はこいつだな」


 不審者や実際にスリを行っている者もいるので、遊撃部隊も大忙しです。

 兵も多数の不審者を捕まえるのを事前に予想しているので、今回はかなり手際よく拘束した者を順次連行していました。

 結局午前中は列が途切れる事がなく、一息ついたのが二時頃でした。


「皆さん、お疲れ様です」

「はあ、流石に疲れたぞ。まさか、こんなにも人が集まるとはな」


 撤収作業が始まったけど、僕たちはひたすら動いていたので炊き出しの余りを食べながら少しゆっくりする事にしました。

 因みにスープの材料は全て無くなってしまい、途中から野菜炒めに切り替えました。

 それでも、十分に喜んで食べて貰いました。


「前回よりも集まった人が増えたから、次回はもっと人手が必要だ」

「そうですわね。要望もたくさん聞けましたし、これから分析をしてもらわないといけません」

「「「「へあ……」」」」


 疲れてへんにゃりとしているシロ達を横目に、僕とスー、それにアオは次回に向けて話を詰めていました。

 年末にもう一回ある予定で、そこには王妃様も参加する予定だそうです。

 そんな僕たちに、ルンが苦笑しながら話してきました。


「いやあ、スーはすっかりお姫様だね。なんというか、前と比較して責任感が出てきたね」

「私たちは、多くの人に支えられていると改めて感じましたので。これからも、できる限り福祉事業は続けていきます」

「身近なお姫様ってのも良いだろうね。今日もスーに沢山の人が話しかけていたし、良いことだと思うよ」


 まあ、この炊き出しは福祉事業と情報収集の他にも不審者を捕まえるという目的もあるけどね。

 でも、やはりみんなが笑顔になるのは良いことだと思うよ。


「個人的には、料理が出来る人がもう少し欲しいな」

「「「さっ」」」


 チラッと僕がジルたちにアピールしたら、一斉に視線をそらされてしまった。

 うーん、僕とアオが忙しいのはもう少し続きそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る