散歩の六百二十六話 今日も良い出来ですね
今日は温かいスープにパンを配るんだけど、クマ肉を使用するので臭み取りが必要です。
先に野菜をどんどん刻んで、大きな寸胴鍋の中に入れていきます。
トントントントントン。
シューン、シュシュシュシュ。
「シュンもアオも、とんでもない速度で野菜を刻むな。流石は『雷撃の料理人』と『チャンピオン』だ」
「ゴル、僕とアオの二つ名を知っているのか?」
「王都に着いてから知ったけどな。もちろん、スーの二つ名もだ」
スーは、自分についた二つ名が好きじゃないもんな。
僕についた二つ名も、そもそも冒険者っぽくないし。
流石に、他の冒険者に二つ名はないそうです。
そして、野菜を切り終わって煮込み始めたら、今度はクマ肉を一口サイズに切って焼いていきます。
ジュー、ジュー。
「炊き出しなのに、手が込んでないか? 普通だったら、肉も野菜もまとめて煮込みそうだけど」
「普通の肉だったそうしても良いのだが、今日はクマ肉で臭みがあるからな」
「うーん、俺には全く分からないぞ」
僕の場合だと、せっかくだから美味しい物を食べさせてあげたいって思うんだよね。
美味しいって言ってくれるのは、何よりの励みになるし。
ではでは、ここからが本番です。
フライパンで炒めたクマ肉にある程度火が通ったところで、ワインを入れてフランベをします。
ジュー、ボゥ!
うん、良い感じになってきたので、どんどんとクマ肉を鍋の中に投入していきます。
後は、煮込むだけですね。
臭み取りに香草も入れて、灰汁を念入りに取っていきます。
「おい、シュン、いま何をした?」
「うん? フランベだよ、クマ肉の臭み取りだ。香草も入れているけど」
「もう、庶民にとっては高級料理だぞ……」
ワイン煮とかもこの世界にはあるから、別にワインを料理に使っても問題ないと思うよ。
さてさて、味も整えたから味見タイムです。
すると、待ってましたって感じで味見隊がやってきました。
「ねーねー、できた?」
「良い匂いがするよ!」
「良いタイミングみたい」
「美味しそう!」
流石の嗅覚というか、シロ達はこの機会を逃しません。
ジルにも、うつわによそった炊き出し用のスープを渡します。
「「「「おいしー!」」」」
「分かっていたが、炊き出しに出す料理ではないな」
シロ達はいつも通りの反応だけど、ジルも分かっていたって苦笑しながら味わっていた。
いずれにせよ、良い感じにできたのでさっそくうつわに盛り付け始めます。
それを、シロが並んでいる人に配り始めました。
「はい、どーぞー」
「な、なんじゃこりゃ! すげーうまいぞ!」
最初にうつわを受け取った人が美味しさに叫ぶと、一気に炊き出しの列が増えていった。
でも、このくらいは予測済みです。
「じゃあ、ジル頼んだぞ」
「ああ、任せろ。高級料理店の味が無料で食べられるんだ、列はもっと伸びるだろう」
こうして、炊き出しと無料治療が始まりました。
二時間ほど、僕もアオも忙しく料理を作っていました。
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