散歩の六百二十五話 スラム街での炊き出しその二

 段々と年末も近くなり、夜が寒いのかフラン、ホルン、ヴィヴィの誰かがベッドに潜り込む事が多くなっています。

 最近では、僕のところにヴィヴィ、スーのところにフラン、シロのところにホルンがいることが多くなりました。

 まあ、三人ともまだ五歳だし元違法奴隷ってのもあるから仕方ないのかな。


「すー、すー」

「ヴィヴィ、もうそろそろ起きるよ」

「うーん……」


 僕が声をかけると、ヴィヴィも目をこすりながらもぞもぞと動きはじめた。

 アオも、ヴィヴィのところにぴょーんとやってきて、むにむにと謎のダンスをしています。

 さて、今日はスラム街での炊き出しを行います。

 前回は赤ちゃんを拾ったりと大変な状況だったけど、果たして今回はどうだろうか。

 そんなことを思いながら、僕もベッドから起きました。


「おー、たくさん人がいるね」


 スラム街の教会に着くと、既に多くの人が教会の周りに並んでいました。

 前回スラム街で行った炊き出しと無料治療が好評だったので、別の教会に行っても人が集まったみたいです。

 因みに、今回王族はスーのみだけど、やる事は変わらないので特に問題ありません。

 そして、この三人が助っ人としてやってきました。


「指名依頼って、炊き出しの手伝いか。王家からの指名依頼って聞いて、ちょっとビビったぞ」

「すみません、よろしくお願いします」

「ははは、任せなさい。このくらい何ともないぞ」


 ジジたちが今日の炊き出しを手伝ってくれる事になったけど、王妃様がジジ達を指名してくれたみたいです。

 そして、既に役割分担は決まっています。


「ジジは、フランと馬と一緒に遊撃部隊な。ゴルが炊き出し側の手伝いで、ルンがスーの護衛を頼む」

「なるほど、列整理が必要だな」

「ふふふ、バッチリ王女様を守るわよ」


 ゴルとルンは、直ぐに自分の役割を把握してくれた。

 しかし、ジジはいまいち遊撃部隊の意味を分かっていなかった。

 という事で、さっそく実演を始めましょう。


 パカパカパカ。


「あっ、この人財布を盗んだよ!」

「「ヒヒーン」」

「げっ、何故分かった!」


 フランが馬に乗って巡回すると、直ぐに窃盗犯が捕まった。

 今日もたくさんの兵が控えているので、直ぐに拘束して軍の施設に連行していきます。

 この光景を見て、ジジも役割を理解したみたいです。


「つまりは、ああいった犯罪者を捕まえればいいんだな。正しく俺向きの仕事だ」

「結構忙しいから気をつけろよ。何せ、人が集まる所に犯罪者も集まるからな」

「任せとけ。それにしても、馬も半端ないな」


 ジジも問題ないとニカっとしています。

 遊撃部隊はもう動いているので、さっそくジジはフランと馬二頭と兵と共に教会の周りにいる不審者の確保に向かいました。

 他のもので救護テントや机に椅子などを準備しつつ、僕とアオは炊き出しの準備に入りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る