散歩の六百十九話 会議が終わってホッと一息
続いて、各地の産業や経済について報告を行います。
細かいところは、各辺境伯様が連れてきた家臣によって報告されます。
しかしながら、その中に何故か僕に関する事も含まれていました。
「シュンが新たな料理を考案したことにより、新たな産業の可能性を見出しました。また、冒険者の活動が増えた効果もあります」
あの、僕が経済効果を生み出したようなことを言われていますけど、僕はそういうことを狙って料理を作ったわけじゃないですよ。
結局は、経済が良くなったのは町の人の努力のお陰ですから。
その後も様々なことが報告され、会議は二時間にも及びました。
うん、中々大変な会議でした。
最後に、こんな事が報告されました。
「スーザン殿下は、正に王家に相応しい働きをしました。我々が、それを証明します」
スーが各地で頑張った事を、北の辺境伯様が代表して改めて証明してくれました。
もちろん、他の辺境伯様もこの決定に強く頷いていました。
話を聞いた陛下も、満足そうに頷いています。
こうして、会議は無事に終了しました。
担当者間の会議は続くそうですが、関係のない僕たちと辺境伯様は応接室に移動しました。
「はあ、流石に疲れた……」
「私も、こんなに集中した会議は初めてです……」
「ヘロヘロ……」
会議に慣れていない僕とスー、それにシロは、応接室に着くなり一気に気が抜けてしまいました。
疲労困憊とは、まさにこのことを言うのでしょう。
それは各辺境伯様も同じみたいで、紅茶を口につけてからソファーに寄りかかっていました。
「ムシャムシャパクパク」
西の辺境伯様なんかは、目の前のお菓子を大量に食べています。
真面目モードが続いたせいで、糖分を取りたくなったのでしょう。
僕もスーも、お菓子に手を伸ばしました。
すると、このタイミングで元気な声の子ども達と保護者が応接室に入ってきました。
ガチャ。
「「「お話、終わったー?」」」
「ええ、終わったわ。みんなは何をしていたのかしら?」
「「「勉強してたよー!」」」
元気いっぱいな子ども達が、スーに抱きついています。
どうやら、トリアさんが教師役で色々と教えていたみたいです。
こうして子ども達も混じって、わいわいとおやつタイムになりました。
そして、トリアさんが僕にズバッと質問してきました。
「シュン様、その辺境伯様はきちんとしていたでしょうか?」
「そこは大丈夫だよ。流石に陛下の前だから、的確な受け答えをしていたよ。その反動が、今の姿だけど……」
「何となく、頑張ったのだと理解しました」
僕とトリアさんの視線の先には、子ども達とお菓子の取り合いをしている西の辺境伯様の姿がありました。
うーん、今のこの姿は威厳もへったくれもないぞ。
「パクパク、モグモグ」
「「「あー! 食べ過ぎだよ!」」」
「ここは、注意しないと駄目ですわ」
子ども達の分まで手を出し始めたので、トリアさんが立ち上がりました。
そして、西の辺境伯様の襟首を掴んで、廊下へと引きずっていきました。
「流石に食べ過ぎだと思いますが……」
「あの、ちょっと、あー!」
西の辺境伯様の叫び声が廊下から聞こえてきたけど、全員聞こえないフリをしていました。
子どもの分のお菓子を食べるのは、やりすぎだと全員が思っていた。
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