散歩の五百八十六話 やっぱりこの二つ名は嬉しくない?

 座学が終わって次は実技講習と持ち物講習なんだけど、部屋から出たタイミングでゴーリキーさんが話しかけてきた。

 どうも、例の孤児院の件で話があったみたいだ。


「講習が終わったら、その四人を連れて個室に来てくれ。孤児院の件で話がある」

「分かりましたわ。それとなく話しかけて連れていきますわ」

「頼むぞ。あと、一人馬鹿がいるみたいだから、そいつは遠慮なくやって良い」


 孤児院の四人はいいとして、ゴーリキーさんは未だに部屋で寝ているオラオラ系を見ていた。

 そしてゴーリキーさんは、こっそりと部屋に入っていった。

 うん、ここはゴーリキーさんに任せよう。

 僕達は、部屋から訓練を行う訓練場に移動します。


「こらー! 講義中に寝るとは一体どういう事だ!」

「あん? うるさ……ヒィィィイ!」


 座学を行っていた部屋から誰かの悲鳴が聞こえてきたけど、特に気にしない様にしよう。

 訓練場に着いた僕達は、さっそく荷物をマジックバッグから取り出して並べた。

 すると、真っ青な顔をしながらオラオラ系が訓練場に飛び込んで来た。

 そして、僕たちの方を見ると何故かビクッとしていた。

 きっと、ゴーリキーさんからありがたいお話を聞けたんだね。

 では、荷物講習の始まりです。


「こうして並べてみると、野営などに必要な荷物は沢山あります。特に、水と食料に寝袋は必需品です。火魔法が使えない方は、必ず火をつける道具も必要です。また、雨が降る事もありますのでカッパやポンチョなどの雨具もあった方が良いでしょう」


 実際に必要な物を目で見ることで、どんな装備が必要かはっきりと分かります。

 僕達は全員アイテムボックスかマジックバッグを持っているから沢山の荷物を持てるが、そうでない人はどんな荷物を持つべきか考えないとならない。


「あと、料理はできた方が良いですよ。マジックバッグにもパンとかが入りますが、毎日パンだと飽きてきます。私達のパーティには凄腕の料理人がいますが、普通のパーティだと中々そうはいかないでしょう」


 スーの説明を聞いたシロ達がウンウンと激しく同意しているけど、僕は冒険者であって料理人じゃないからね。

 新人冒険者も、僕の事を見てふむふむと頷かないの。

 確かに料理は大切だけど、食べられる物ができれば良いんだからね。


「では、実技講習に入る前に質問を受け付けます。何でも良いですよ」


 僕の時は、料理関連の質問しか来なかったなあ。

 すると、オラオラ系がおずおずと手を挙げた。


「あ、あの、こ、講師は『聖なる女帝』って二つ名を持っていて、とても強いと聞きましたが……」

「えっ!」


 うん、間違いなくゴーリキーさんがオラオラ系に言ったんだな。

 そして、スーが予想外の質問に戸惑っている間にシロ達が勝手に答えていた。


「スーお姉ちゃんは、『聖なる女帝』って二つ名を持っているよ!」

「とっても強いんだよ!」

「オークキングも簡単に倒すよ」

「ドラゴンの治療もするよ」


 うん、特にフランのオークキングを倒すのとヴィヴィのドラゴンを治療するくだりで新人冒険者がざわざわとし始めた。

 オラオラ系も、今更ながら良くない態度を取った相手がとんでもない強者だと知ったみたいだぞ。

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