散歩の五百八十四話 しゅんとしている子ども達
一週間後、予定通り僕たちは冒険者ギルドに向かいます。
再び、新人冒険者向け講習の講師を行います。
「何だか私が講習を受けたのが、つい先日のように思えますわ」
「あの時は、かなり大変な講習だったもんね。前回は新人冒険者もとても大人しかったし、今回も特にトラブルはないんじゃないかな?」
僕達は冒険者ギルドについて手続きを済ませ、座学を行う部屋の中で色々と話をしています。
シロは、アオ達と薬草講習をどうするか話し合っています。
さて、部屋の中に段々と新人冒険者が入ってきたのだけど、今回は何人か気になる人物がいる。
オラオラ系の冒険者もいるけど、明らかに訳ありって感じのボロボロな服を着た子どもがちらほらと。
オラオラ系はどうにかなりそうなので、僕とスーはボロボロの服を着た子ども達に話しかけた。
「こんにちは、今日講師をするシュンです。こっちはスーだよ」
「みんなはどこから来たのかな?」
「あの、えーっと、その……」
おや?
犬獣人の男の子が、事情をとても言いにくそうにしている。
年齢はフラン達よりも少し上だけど、何か事情がありそうだ。
すると、狐獣人の女の子がおずおずと身のうちを話し始めた。
「あの、私達は王都にある孤児院に住んでいて。その、冒険者になって、お金を稼いでこいっていわれて……」
「おい、黙ってろっていわれたじゃんかよ!」
「でも、稼いだお金も、全部取られちゃう……」
あっ、うん、これはちょっとマズい事になっているかも。
子どもが稼いだお金を、大人が受け取る事自体は問題ない。
しかし、話を聞く限り、この孤児院の運営者は子どもを使って搾取しているとしか考えられなかった。
これは、直ぐに動かないといけない案件だ。
「ねえ、その孤児院の名前をお姉ちゃんに教えてくれるかな?」
「ヒュー孤児院、スラム街にあるの……」
「ヒュー孤児院ね。教えてくれてありがとうね」
狐獣人の女の子から聞いた情報を、スーは通信用魔導具で各所に連絡していた。
すると、直ぐに返信が返ってきた。
「あっ、お義母様からです。既にその孤児院は虐待や横領の疑惑があって、直ぐに兵を向かわせるそうです」
「この前の炊き出しの時に、情報を集めた中に入っていたのかも。暫く、軍の対応待ちだね」
手は打ったから、後は僕たちは普通に講習を行えば良さそうです。
新人冒険者も集まったみたいだし、何よりもオラオラ系の冒険者が机に足を乗せて早くしろと悪態をついていた。
今まで闇組織の構成員と戦ってきた僕たちからすると可愛いものだけど、他の人を待たせるのは良くないので講習を始めましょう。
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