散歩の五百八十一話 明日は王城へ

 ちょうど講習が終わったタイミングで、またゴーキさんがやってきた。

 どうやら、たまに来て様子を見ていたみたいだ。


「おっ、無事に終わったみたいだな。新人冒険者の反応を見るに、特に問題なさそうだな」

「今日集まった人は、みなさん良い人でしたよ。真剣に講習も実技も受けてくれました」

「まあ、シュンの場合はよほどの馬鹿以外は対応できるだろう」


 うーん、僕でもたまに冒険者ギルドで暴れた馬鹿を相手にするのは嫌ですよ。

 退散して受付に完了手続きをしにいく新人冒険者の後ろ姿を眺めていると、またもやゴーキさんがとある事を提案してきた。


「シュン、一週間後の新人冒険者向け講習も頼むわ。そうだな、薬草採取講座とセットでも良さそうだぞ」

「いやいや、そんな既に決定しているみたいに言わないで下さいよ」

「じゃあ、受付に言っておくぞ。ははは、優秀な冒険者が増えて助かるぞ」


 ゴーキさんは、僕の文句を無視して受付に向かって行った。

 僕は思わずガクリとしてしまった。

 うん、後始末をして帰ろう。

 僕は出した武器をアイテムボックスにしまって、受付で完了手続きをした。

 そして、馬車に乗ってヴィクトリー男爵家の屋敷に戻りました。


「「「「ただいまー!」」」

「お帰りなさい、早かったわね」


 屋敷に入ると、ちょうどセーラさんが僕達を出迎えてくれました。

 当初は帰るのが夕方になるかもと伝えていたから、随分と早い帰りです。


「実はいきなり新人冒険者向け講習の講師をやる事になったので、午前中で戻ってきました。やっぱり、慣れないことはするもんじゃないですね」

「でも、シュンなら講師もそつなくこなしそうよ」

「そんな事はないですよ。やっぱり、人に教えるのって緊張しますし責任感が伴いますよ」


 講師補助の経験があるから何とかなったけど、もう既に二回目が決まっているんだよなあ。

 来週はスーも大丈夫らしいし、一緒に講師をして貰いましょう。


「今度はね、シロが薬草採取の講師をするんだよ!」

「あら、それは凄いわね。頑張らないとね」

「うん!」


 そして、既にシロが薬草採取講座の講師をすると張り切っていた。

 シロは鼻もとても効くし、薬草を見つけるのはとても得意。

 だけど、実際に教えられるかな?

 夕方になってスーも王城から帰ってきたので、来週の予定を伝えたら問題ないと答えてくれた。

 でも、それ以上に予定外の事が待っていた。


「あっ、明日シュンさんも王城に来てって言われました」

「えっ、僕も王城に?」

「はい、どんな事かは聞いていないのですけど……」


 うーん、スーにも秘密って事は何だか嫌な予感がするよ。

 明日どんな事が待っているのだろうか。

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