散歩の五百七十八話 手荷物講習

 休憩を取りつつ、みんなで訓練場に移動します。

 その間も、新人冒険者から質問を受けていた。


「あの、先生って料理人じゃなかったんですか?」

「この前依頼でスラム街に行った時に、沢山の人に料理を振る舞っていましたよ」


 うん、質問の殆どが僕が冒険者じゃなくて料理人じゃないかってものだった。

 冒険者っぽい質問はなく、更に炊き出しなどで僕が料理を作っている目撃例があったので僕が冒険者だと疑っているみたいです。

 僕は、立派な冒険者ですよ。

 心の中で、思わずガクリとしちゃいました。

 さて、気を取り直して今度は手荷物講習です。


「どのような依頼を受けるかによって、持ち物は変わってきます。薬草採取、荷運び、護衛依頼など、必要な物を良く吟味して選びましょう。また、特に野営を行う際は荷物が増えてきます。水の確保も大切になりますので、どんな依頼でも水筒は持ちましょう」


 荷運びや薬草採取でも、汗をかけば水を飲まないといけません。

 この世界では脱水症状とかの知識も不足しているので、そこから死に至る事もあります。

 僕たちも、定期的に必ず休憩をして水を飲ませるようにしています。


「少し値が張りますが、マジックバッグを使うのも有効な手です。中にはマジックバッグは邪道だと考えている人もいますが、その意見は否定しません。しかし、マジックバッグがあって助かったことも私は経験しています」


 やはり多くの荷物が持てるというのは、とても大きな魅力です。

 特に野営時には、荷物をどれだけ持てるかがポイントになっています。

 食料や水は生存率に直結してきます。


「冒険者ギルドや街では、初心者向けのセットが売っています。最初はそれで良いのですが、やはり品質は劣ります。そのうちに、自分にあった物を選ぶと良いでしょう。あと、回復魔法が使えない人は、必ずポーションを携帯するように。予期せぬ怪我をする事も考えましょう」


 僕達は回復魔法使いが多いけど、必ずしもパーティに回復魔法が使える人がいるとは限りません。

 怪我をした時に対応するのは、とても有効です。

 ここで、簡単な救急講習をする事に。


「擦り傷や打撲もそうですけど、傷口は清潔な水で洗い流しましょう。出血は程度によりますが、押さえる圧迫止血が有効です。数分押さえるだけで、大抵の出血は止まります。骨折の場合は、骨折箇所を丈夫な木を添え木にして包帯で固定します。骨折レベルの場合は、治療院で見てもらったほうが治りが良いでしょう」


 とりあえずこんなものですね。

 では、質問タイムです。


「電撃の料理人は、料理人じゃなくてちゃんとした冒険者だったんだな……」

「料理の知識もそうだけど、治療の知識も凄いなあ」

「料理人なのに、冒険者としての知識が豊富だ」


 あの、だから僕は冒険者ですよ。

 質問タイムも、どんな料理を作るんですかとかが多かった。

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