散歩の五百七十七話 真面目に座学を行います
「基本的な事はこの冊子に書かれていますが、本当によく読んでください。他人に迷惑をかけない事はもちろんのこと、自分の力量を把握して無理のない依頼を受けて下さい。残念ながら、初心者が勝手に討伐依頼を受けてゴブリンに蹂躙されたのを目の前で見ました。この様な事実があるからこそ、冒険者ランクによって依頼を制限しています」
南の辺境伯領であった悲惨な事件は、僕の心の中に深く刻まれている。
シロとアオもあの事件を思い返したのか、かなりシュンとしてしまった。
もちろん新人冒険者も、いきなり命の問題が出てきたのでかなり表情が引き締まりました。
「また、依頼を行う際はとにかく準備を怠らない事です。どんな些細な依頼でも、事前準備があるとないとでは全く違います。また、森に入る際は周囲に気を付ける様にしましょう。予期せぬ魔物との出会いがある事が考えられます。私も王都近郊の温泉街でドラゴンに遭遇した時は、命の危機を感じました」
またもや新人冒険者がドラゴンというキーワードを聞いてざわついています。
目の前に僕たちでも討伐不可の魔物が現れたと聞いて、そんな危険があるのかと思ったみたいですね。
シロ達も、うんうんと激しく同意していました。
「冒険者同士でいざこざが発生する場合も、もちろん考えられます。冒険者ギルドや各地の守備隊に相談して下さい。相談するのは別に恥ではありませんし、私も何回も冒険者ギルドに相談しました。また、悪の誘いにも注意して下さい。実際に北の辺境伯領では、闇組織が冒険者を勧誘していました。盗賊に身を落とすと同意語です、絶対に勧誘に乗らない様にして下さい」
三度目のざわつきが起きました。
北の辺境伯領であった闇組織の勧誘には、僕も迷惑されたもんね。
守備隊のお陰で事なきを得たけど、どこでどんな勧誘があるかも全く分かりません。
甘い誘惑には、きっぱりと断るなどの毅然とした態度が必要です。
「地方によって、考え方や風習が違います。西の辺境伯領では獣人などが人口の多数を占めます。人族だからと騒ぎを起こして捕まった人もいますが、決してその様な事はしないように」
僕の説明を聞いて、特に獣人がうんうんと頷いていました。
似たような事が、きっと過去にあったのでしょう。
そろそろ時間ですね。
「では、この後は訓練場に移動して手荷物に関する説明と質問タイムとします。そして実技試験を行います。僕や武道大会チャンピオンのスライムのアオ、、ハンターライセンス持ちのうちの子が相手になります」
「「「うおおおー!」」」
実技の話をしたら、何だか初心者冒険者のテンションが一気に上がっちゃった。
アオも、触手を振ろうとして固まっちゃいました。
どうも、中々二つ名持ちの冒険者とは相手する機会がないそうです。
逆に、シロ達はやる気満々ですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます